2022.05.13 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<86>5G×ディープラーニング=DXになる⑦

 本連載の第80回「5G×ディープラーニング=DXになる」シリーズ初回では、新人やユーザー向けデジタルトランスフォーメーション(DX)教育において、筆者は「IoT、人工知能(AI)、第5世代移動通信規格5Gの難解なデジタル技術の話を一切せず、それらの役割を一言で伝えるようにしている」と述べた。

 それは「IoTが現実社会の課題に関するデータを集める」「集めたデータをAIが分析し、解決のための判断結果を現実社会へ戻す」「5Gは現実社会(フィジカル空間)とサイバー空間の間でデータを回す」ということだった。

 前回まで「ビッグデータ」が産業革命の新たな〝資源〟になるという前提のもと、典型的なDXである映像データ駆動型ビジネス変革には「ディープラーニング」と「5G」が欠かせない理由を解説してきた。

 これらの解説で、文系分野の経営者や経営学部の学生からは「技術を知らなくても理解できる」と言われる一方で、「DXは中小企業では難しいのでは?」という質問も多く出てきた。そこで今回からは、この質問に対して答えていきたい。

DX:クラウドの情報資源によるデータ駆動型ビジネス変革

クラウドを明確に

 まず、雲をつかむようなクラウドの中を明確にしてもらうことから始めよう。

 明治20年に日本橋茅場町に設置された「第二電燈局」という日本初の火力発電所は、近隣の企業に電力の供給を行っていたのだそうだ。以降、20年ほどは地域の小規模火力発電所が周辺地域の事業所に電力の供給を行っていたらしい。これは「分散型」の電力システムといえるだろう。

 その後、水力発電所と火力発電所の大型化とに伴い、遠距離送電による「集中型」の電力システムへと変わり、現在の海外炭や石油、天然ガス、原子力などを組み合わせた、ベストミックスによる「集中型」の電力システムが形成された。

 言うなれば、事業所ごとに分散されていたエネルギー資源が、発電所の大型化と送配電網の広域化によって大規模発電所に集中化されたわけだ。

 しかし、2011年の東日本大震災の後、地域の太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーが注目され、燃料電池や蓄電池などを加えた「分散型」の電力システムが再び脚光を浴びるようになった。この「分散」→「集中」→「分散」という〝資源〟の遷移は、エネルギー資源だけでなくDX推進に欠かせない「情報資源」でも同じだ。

 グーグルをはじめとした多くのIT企業が提供する「クラウド」が登場する前は、データやプログラムなどの「情報資源」はユーザーのパソコン(PC)の中にあったので、「分散型」の情報システムだった。しかし、06年にグーグルCEOのエリック・シュミット氏が講演の中で「データもプログラムも、クラウドの中にあればいい」と言ったことから、「情報資源」は次第に〝クラウド(雲)〟の中へ移っていった。

「集中型」システム

 今ではデータベースやディープラーニングもクラウドにあり、雲の中をのぞける権限を持つユーザーがPCやスマートフォンから5G回線などを経由して「情報資源」を利用する、「集中型」の情報システムとなっている。(つづく)

 〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉