2022.05.25 宇宙3Dプリンターで衛星アンテナ三菱電機開発、利用側にも期待

運用のイメージ(提供=三菱電機)

 宇宙ビジネスで、最近活用が広がっている小型の衛星。ただ、高性能にするには、大きなパラボラアンテナが必要。そこで課題になるのが、打ち上げ時の制約などだ。折り畳んで格納しておき、人工衛星が軌道上に着いてから広げるような手法が一般的。

 だが、打ち上げ時や軌道投入時の振動や衝撃に耐えられるような構造も必要になり、一段と重くなり、コストもかさむ。

 そこで三菱電機は、宇宙空間で3Dプリンターを活用し、人工衛星用アンテナを製造できる技術を、世界で初めて開発した。

 同社は、真空での押し出しや硬化に適した安定性を持つ、紫外線硬化樹脂を開発。低圧や無酸素の環境では、樹脂の蒸発などの問題が生じかねないため、配合を工夫して完成させた。

 また、プリンターでは、樹脂が回転するろくろに巻き付くような成形のメカニズムを工夫。小型衛星でも、大開口のアンテナを搭載することが可能な技術を開発した。太陽光で樹脂を硬化させることで、エネルギーも節減できる。

 小型衛星で使われているスペック(10×10×30センチ)を想定し、より大きな165ミリメートル径でアンテナを試作。性能を確認できた。

 宇宙関連のベンチャー側にも、こうした技術への期待がある。三菱電機は「まだ開発したばかりの技術なので、実用化はもう少し先でしょう」との見方を示すが、多様な人工衛星を可能にするとともに、宇宙空間で大きな構造物を3Dプリンターでつくることにも道を開く可能性もありそうだ。(26日の電波新聞・電波新聞デジタルで詳報します)