2022.06.02 【ロボット・ドローン用製品技術特集】ドローンから超高精細4K映像を送出 東工大がリアルタイム5キロメートル伝送などに成功

ドローン同士がお互いに電波で邪魔をされないように無線(通信)をするためのアンテナ制御を行っている=成果を発表する動画から

 東京工業大学は、ドローンから送出した4K(2160/60p)生映像の5キロメートル伝送などに成功したと発表した。工学院電気電子系の阪口啓教授らの研究グループが、光電製作所開発部、工学院大学工学部機械システム工学科の羽田靖史准教授ら研究グループと、3機関共同研究で取り組んでいるもの。総務省の託研究「5.7G㎐帯における高効率周波数利用技術の研究開発」におけるフィールド実験で、高度約100メートルで飛行する中で実現した。

背 景

 ドローンの活用は急速に進展しつつあり、目視外飛行や自動運行時の安全確保、効率的な警備、被災地などの情報収集への活用のためにも、より高精細な生映像のリアルタイムな無線伝送が求められている。また、増え続ける周波数需要を踏まえ、使用無線周波数帯域は狭帯域で、複数機器での同時運用ができることが求められる。

 そのような背景の下、総務省では、5.7ギガヘルツ帯「無人移動体伝送システム」として制度化された計105メガヘルツの帯域を使用。最大5キロメートル遠方のドローンから超高精細4K映像のリアルタイム伝送や、最大10台のドローンを同一エリア内で同時使用可能にすることを目的に、委託研究「5.7G㎐帯における高効率周波数利用技術の研究開発」を2019年に公募。3機関共同研究としてこの研究が採択され、取り組まれてきた。

成 果

 福島県南相馬市の福島ロボットテストフィールド付近海岸の指定エリアに研究試作機を持ち込んでフィールド実験を実施した。

 試作無線機を搭載したドローンを制限高度150メートル未満で飛行させての通信実験を行い、5.7ギガヘルツ帯「無人移動体伝送システム」で定義された帯域幅10メガヘルツのチャンネルを使っての4K生映像の5キロメートル伝送、同じ10メガヘルツのチャンネルを使って、あるドローンからの映像伝送と異なるドローンへの制御データの同時伝送、帯域的に重複が懸念される無線LAN機器の検出・干渉回避手段の検証、5キロメートル先の地上高150メートルからでも通信品質を確保するアンテナ特性・追尾機構の検証などを実施。目標とする性能を満足できることを確認した。

今後の展開

 現状は機能試作機での個々の機能確認が行えた段階。今後、機器の安定性、システム操作性の向上を図るとともにドローン搭載を踏まえてのサイズ・質量・コストの削減を図り、早期実用化を目指す、としている。