2022.07.06 町の電器屋さんが挑む地域との共生大分の「パナポートクツカケ」

仕事の魅力を語る沓掛さん

 「仕事がめちゃくちゃ楽しいんですよ。ほかの人から見るとおかしいかもしれないですけどね」。大分県豊後大野市で地域電器店「パナポートクツカケ」の専務を務める沓掛陽洸さん(33)は笑顔を絶やさない。

 県の南西部に位置し、山あいにある豊後大野市は畑作地帯で人口減少と高齢化が進む。地域電器店の経営も、顧客や経営者の高齢化、量販店の進出、ネット通販の台頭など順風満帆ではない。そうしたなかでも沓掛さんは地元の電器店として寄り添うことを選んだ。

スマートSPを活用

 その取り組みの一つが、地域のお年寄りへのスクリーン付きスマートスピーカーの提供だ。コミュニケーションツールとして、互いに顔が見えて簡単に呼び出せるメリットを生かし、同店や家族、友人との連絡に役立ててもらう。これまで家電販売やケーブルテレビの代理店業務を手掛けてきた同店の、新たな収益化も模索している。

 沓掛さんはこの取り組みを、今年開かれた中小事業者の後継候補が新規事業を競う「第2回アトツギ甲子園」(中小企業庁主催)で発表した。題して「限界集落でも限界はない~路上の伝説から宅内の電設へ」。

 プレゼンテーションは好評で、全国からエントリーされた138人の中からファイナリスト15人に選ばれた。

やりがいを知って

 今でこそ、店の「後継ぎ候補」として精力的に営業や配達などをこなす沓掛さんだが当初、店を継ぐ気はまったくなかったそうだ。

 店の次男に生まれ、高校卒業後の数年は定職にも就かず、パチンコや選手として活動していた格闘技などに明け暮れる毎日。しかし20代半ばともなると、周囲からの視線も気になり、日々に「だんだん飽きてきた」。

 それまで意識したこともなかった店の手伝いを始めてみたところ「お客さんが『ありがとう』『うれしい』と言ってくれる。こんな自分でもきちんと働けば感謝してもらえるとわかった」と、顧客とのコミュニケーションや仕事の楽しさを知った。

 沓掛さんは「お客さんとの距離が近い“町の電器屋さん"は伸びしろだらけ。高齢化社会でその強みをもっと生かせれば」と語り、「町の人全員をお客さんにしてしまうくらいの勢いで事業を進めていきたいです」と力を込めた。

(8日付電波新聞/電波新聞デジタルで詳報します)