2022.10.05 【この一本】「愛する人に伝える言葉」(配給:ハーク/TMC/SDP)

© 2013 Free Range Films Limited/ The British Film Institute / Curzon Film Rights 2 and Channel Four)

 バンジャマン(ブノワ・マジメル)は人生半ばで膵臓(すいぞう)がんを宣告され、母のクリスタル(カトリーヌ・ドヌーヴ)とともに、業界で名医として知られるドクター・エデ(ブリエル・サラ)を訪れるも、ステージ4のがんは治せないと率直に告げられる。自暴自棄になるバンジャマンと自分を責めて罪悪感に駆られるクリスタル。ドクターの助けを借りて、最期に向かって歩みを進める――。

 「死」は平等に訪れ、避けては通れないものだと分かっていても、直面すると誰もが悲しみや動揺など感情が揺さぶられてしまうものだと改めて実感させられる。

 マジメルの徐々にやつれ、もうろうとする生々しい演技と、現役のがん専門医でもあるサラのリアルな掛け合いが、観客の感情を大きく揺さぶる。

 マジメルは、同作でフランスのアカデミー賞に当たるセザール賞最優秀男優賞を受賞した。監督は「太陽のめざめ」(2015年)でカンヌ国際映画祭のオープニングを飾ったエマニュエル・ベルコが務めた。

 7日から新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国でロードショー。