2022.10.12 【日本ロボット工業会創立50周年特集】世界のロボット産業に貢献 記念事業や50年ビジョン策定
日本ロボット工業会50周年記念ロゴマーク
日本ロボット工業会(JARA=Japan Robot Association)は、10月に創立50周年を迎え、記念式典や記念シンポジウムを開催するほか「ロボット産業ビジョン2050」を策定するなど記念事業を計画している。
同工業会は、1971年3月に任意団体「産業用ロボット懇談会」として設立、72年10月に任意団体「日本産業用ロボット工業会」に、73年10月には社団法人化され、94年6月「日本ロボット工業会」へと改組した。公益法人制度改革による新制度の下、2012年4月1日付で一般社団法人へ移行した。世界シェアが高く、世界をリードする表面実装機各社も「電子部品実装ロボット」として同工業会の活動に参画し、重要な役割を果たしている。同工業会が一大イベントして毎年東京で6月に開催している電子部品実装技術の総合展示会「JISSO PROTEC(実装プロセステクノロジー展)」は実装機関連会員企業が中心となって運営されている。
同工業会は、ロボットやそのシステム製品に関する研究開発の推進と利用技術の普及促進を行うことにより、ロボット製造業の振興を図るとともに、広く産業の高度化や社会福祉の向上に資し、国民経済の健全な発展と国民生活の向上に寄与することを目的としている。
記念事業に加え、同工業会の活動の柱となっている「市場拡大に向けた取組み」「イノベーションの加速化」「国際標準化の推進、国際協調・協力の推進」の三つを重点項目として業界活性化のさらなる推進に向け、活動を行っている。
ロボット先進国の日本にあって、日本ロボット工業会が半世紀にわたってロボット産業の発展に果たしてきた役割は日本のみならず世界的にも大きなものがある。
日本は少子高齢化による人口減少により、製造業の労働力不足はますます深刻になっている。製造業のみならず医療・福祉、社会インフラ、サービス産業など、などさまざまな分野でロボットの活用が期待されている。欧州など先進諸国も同様に人口減少が進み、また中国も超高齢化社会に入っていくことから、今後ロボットへの依存が高まると予想され、ロボット産業の育成は世界的に国家的政策として対応していく必要がある。
日本でも政府が将来のロボット人材育成のために「未来ロボティクスエンジニア育成協議会(CHERSI)」を後押しするなど、官民一体になったロボット産業育成プログラムが進んでいる。
今年度から就任した山口賢治会長(ファナック社長兼CEO)は「当工業会は本年10月をもって創立50周年を迎えた。50年を節目に、当工業会やわが国のロボット産業の歩みを回顧するとともに『ロボティクスがもたらす持続可能な社会』を統一テーマに、次の半世紀に向け社会において広く実現が期待されるロボットの有り様について展望・発信するための各種記念事業を実施し、記念事業を通じてさらなるロボットの健全な普及とロボット産業の発展を目指す」と語る。
記念事業の一環として50周年記念ロゴを作成した。
50年とこれから歩む50年を表す数字の中に、ロボットの愛情あふれる表情と幸せそうな人の笑顔を描くことによって「人とロボットの共生」を表現している。
6月15~17日には、3年ぶりになる同工業会主催の実装プロセステクノロジー展(東京ビッグサイト)を開催した。会場では、同工業会の歴史からロボット技術の変遷、ロボット産業の変遷など、ロボット業界の半世紀のあゆみを振り返る内容の記念パネル展を実施した。
13日に記念式典を開催するとともに、13、14日の両日には「記念シンポジウム」を開く。「ロボット産業ビジョン2050」を策定するほか、50年史を編さんする。記念式典開催時に、同工業会の各種事業を通じてロボット業界の発展に貢献した方への表彰を行う。
また、19~21日には展示会「Japan Robot Week2022」(東京ビッグサイト)を開催し、幅広い分野のロボット総合展として、さまざまな分野へのロボット利用拡大を提案するイベントも計画している。
同工業会の統計(会員と非会員調査。サービスロボット除く)によると、産業用ロボットの21年(1~12月)受注・生産・出荷実績は、年間受注額は初めて1兆円を超え、1兆786億円(前年比25.6%増)となり、生産額は9391億円(同22.5%増)とそれぞれ過去最高を記録した。受注台数は29万9035台(同42.2%増)生産台数は25万6783台(同33.1%増)となり、2年連続で増加した。出荷は26万1636台(同33.1%増)総出荷額9624億円(同23.2%増)の推移となり、3年ぶりに増加に転じた。
21年は、地政学的理由や部品不足といった懸念材料があったものの、引き続き中国からの需要が市場をけん引するとともに、欧米もコロナ前の水準に戻すなど、輸出市場を中心に好調さがみられた。また、コロナ禍による事業継続や非接触観点でのニーズが生じたことも追い風となり、全体として大幅なプラス成長となった。
22年は、地政学的リスクなど先行きの不透明さが増す中、国内外での継続的な自動化需要の増加が期待できる。そのほか、コロナ禍による感染防止対策上での新たなロボットニーズも生まれており、ロボット受注額は1兆1170億円(同3.6%増)、生産額は9770億円(同4.0%増)を見込まれている。