2022.11.04 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<109> 信長は来たのか? デジタル変革の行方②

 電波を発する基地局が拡大すると地図(マップ)が色付いていく―。通信サービスが受けられるエリアを示したマップはまるで山の紅葉のようだ。

 第5世代移動通信規格5Gのスマートフォンが使える5Gサービスエリアのマップも一面に紅葉しているところが増えてきた。まさに「5Gが来た」と言ってもよいだろう。

 一方で「ローカル5Gは来たのか?」という疑問が残る。Accuver社の全国ローカル5Gマップでは、一部の県に白色が残るだけで、大半の都道府県に色が付いている。しかし、これは都道府県内に一局以上のローカル5G基地局があるという意味だ。一本でも紅葉した木(基地局)があれば、その都道府県全体に色が付くようになっている。

 詳しく調べるために、区市町村に色が付いている同社の都道府県ごとのローカル5Gマップを見てみよう。

 例えば、東京都のマップを見ると大半の地域に色が付いている。神奈川県も半分近くに色が付く。ただ、実体は一部の自治体や大学、光回線やケーブルテレビなどの地域の通信事業者、通信機器ベンダーなどの建物や敷地内にある実証実験用のローカル5G基地局であることが多い。

 仮に、ローカル5Gを導入している建物や土地まで区別して色付けしてくれるマップがあるとすれば、真っ白な中に色がわずかに点在するイメージになるだろう。つまり、ローカル5Gは紅葉が始まったばかりだ。

まだ来ていない

 まさに今、ロープウエーから見える金華山を覆う木々と同じだ。かつて、この上にある山城に織田信長が来て、岐阜の城下が「楽市楽座」でにぎわった。翻って、今の社会にローカル5Gが来てビジネスが「デジタルトランスフォーメーション(DX)」でにぎわっているかといえば、そうではない。

 残念ながら「ローカル5Gはまだ来ていない」と言わざるを得ないだろう。

 ローカル5G基地局を設置しただけではDXとは言えない。なぜなら、社会が求めているのは電波を発するテクノロジーそのものではないからだ。Sub-6やミリ波といった電波が搬送する大容量データとデジタル技術を活用して、今まで実現できなかった社会の課題を解決していかなければならない。

喫緊の課題解決へ

 例えば町工場やオフィスビルなど、少子高齢化による人手不足という喫緊の課題を抱えている中小企業は多い。これを解決する一つの答えに、働き方改革や匠(たくみ)の技のデジタル化、ロボットなどとの協働がある。

 実現していくために工場やオフィスなどの現場に設置したイメージセンサーで高精細の4K画像データを収集し、宅内のWi-Fiルーターと最寄りの電柱に設置されたローカル5G基地局を経由してクラウドに伝送する。集まったデータはクラウド上(サイバー上)のディープラーニングで分析し、分析結果を現場にほぼリアルタイムで戻しロボットと連携して業務プロセスや働き方を変革していくのだ。

 そして、顧客をはじめ、従業員や経営者とその家族が、まるで「楽市楽座」を謳歌(おうか)した庶民のように、喜びに満ちた顔にならないと真の変革とは言えないだろう。

 ロープウエーの山頂駅からしばらく急な坂道を登ると、アラカシやツブラジイの、まだ緑を残した葉の間から、突然、真っ白な天守閣が目に飛び込んできた。信長のいる岐阜城だ。筆者は、畏れと期待を胸に入城し、最上階の信長の間へと階段を上った。(つづく)

 〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉