2022.11.11 EV普及へ鍵握る電池の計測・分析 LIBや全固体電池の高効率化に寄与

EVの急速充電口からバッテリーを直接測定するHIOKIの技術

 リチウムイオン電池(LIB)は、スマートフォンやワイヤレスイヤホンなど身の回りのさまざまな製品に使用されている。エネルギー密度が高く、小型化や高出力化に対応できるため鉛蓄電池からの置き換えが進む。

 車載用LIBは、各国で自動車の電動化が推進される中で生産が急増。EVなど自動車向けの市場は2025年に約9兆4000億円と、20年から2倍を超えると予測される(富士経済調べ)。

 電池の高効率化を図り、安全性を担保するのに欠かせないのが計測・分析だ。

 HIOKIは電池材料からセルやモジュール、パックの製造・組み立て、完成品の性能検査まで一連の工程で測定・解析のソリューションを提供する。

 同社が近年力を入れるのが、車載電池を有価物として循環させる仕組み作りへの寄与だ。

 9月に発表したのはEVの急速充電口から直接バッテリーを計測する技術。微小電流を印加し、電池の内部抵抗(インピーダンス)と電圧からバッテリーの状態を検知する。コネクターを接続してから数十秒で検査は完了。走行距離が伸びると内部抵抗は増加するため、電池の劣化状態が推定できる。

 計測器で残存価値を正しく評価し、リサイクルやリユースを促すことで中古EV市場の形成を促し、EVの普及につなげていきたい考えだ。

 電池の高効率化を目指す研究開発分野で幅広い分析機器のラインアップをそろえるのが日本電子だ。

 LIBの主要部材の一つである正極材の評価には、TEM(透過電子顕微鏡)やSEM(走査電子顕微鏡)などを利用。粒子の大きさや結晶の方位からコバルトやニッケルなどの元素の分布などが分かるため、電池の品質管理に活用できる。

 軟X線分光器は劣化した物質の化学状態の変化と同時に多元素を分析できる日本電子だけが持つ装置。充放電前後の電池表面と内部のスペクトルの差から劣化度を推定できる。

 計測・分析各社の取り組みが、自動車や電機などメーカー各社の実用化に向けた開発を後押しする。