2022.11.25 【はんだ総合特集】最終製品別、工法別など開発加速・カーボンニュートラルに高い関心

車載、産業用など多様化するプリント基板に対応してはんだ製品が進化を続けている

低融点はんだでカーボンニュートラルに貢献するはんだ業界低融点はんだでカーボンニュートラルに貢献するはんだ業界

 5G、EV、IoT、カーボンニュートラル、DX、GXなど時代の潮流の台頭により、電気・電子機器需要が底上げされる中で、はんだ業界は用途に合わせた製品開発や、カーボンニュートラルに貢献する低融点化などさまざまな進化を続けている。

 はんだは、合金の一種で、金属の接合材料として広く用いられている。電気・電子機器の製造にも不可欠で、電子回路基板(プリント回路基板、プリント配線板とも呼称)の配線パターンに沿って電子部品や半導体、コネクターなどを搭載して接続するために使われる。

 表面実装技術と呼ばれる電子回路基板製造工程では、ガラスエポキシ材料などの基板上の銅箔(はく)に描かれた電子回路に沿って、はんだ印刷機でペースト状のはんだを塗布し、その後に表面実装機(マウンター)で部品を搭載し、リフロー装置(はんだ槽)ではんだ付けをする。

 リフロー装置は一般的に250度前後の温度ではんだを溶解し、温度が下がれば固まって電子部品と電子回路基板が接合される。はんだ付けは、はんだごてやはんだ付けロボットを用いるケースもある。

 ■はんだの接合プロセス

 はんだ付けの結合プロセスは、フラックスによる「酸化被膜除去」の後、母材とはんだにおける「ぬれ」「溶解」「拡散」によって達成される。酸化被膜が除去された金属表面に溶融したはんだがぬれ広がり(ぬれ)、はんだ成分中へ母材の金属成分が溶け込む(溶解)。金属成分が溶解する過程ではんだ材と母材の原子が相互に移動することによって、金属間化合物が形成される(拡散)。この溶解と拡散によって、はんだの金属間結合が達成される。

 中でも「ぬれ性」は製品の機能性や安全性に大きく影響するため、はんだ付けの欠かすことのできない特性になる。EV用プリント基板はじめ、従来以上に高品質はんだ付けが要求され、中でも「ボイド」は、はんだ不良の原因になり、ボイドを抑えるはんだ製品の開発が重要になっている。

 ■多組成化

 従来、はんだの合金組成はスズ(Sn)、銅(Cu)、鉛(Pb)系が主流だったが、鉛が環境に与える影響から、現在は鉛に代えてスズと銅を基材に銀(Ag)などを加えた製品が普及している。日本では、2000年に電子情報技術産業協会(JEITA)がスズ、銅を基材に、銀の含有率を3%(質量比)にした「3銀」とも呼ばれる「SAC305」を「業界標準」として推奨。これまで家電、AV機器など広く採用されてきた。しかし、金属材料価格が変動し、特に銀は数倍に値上がりしたことから、銀の添加量を抑えた「低銀はんだ」や銀を含まない「銀レスはんだ」が増えている。

 用途に合わせて金属組成を変える製品も増えている。例えばEV(電気自動車)に用いられる電子回路基板は耐候性や、耐振動性など高強度が要求されることから、インジウム(In)、コバルト(Co)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)などを添加し、多組成化することで、接合強度を高める新しい製品が登場している。

 ■原材料価格の高騰

 非鉄金属の値上がりをはじめ、原材料価格の高騰が製造業の経営を悩ませている。はんだ業界も主材料のスズ、銀、銅の高騰によるしわ寄せが顕著になり、各社は対応に苦慮している。

 国際錫(スズ)協会(ITA)は、2022年の精錬錫の世界需要が前年比0.6%減に失速する見通しだと発表した。スズは22年4月までは高騰を続け、現在の価格は落ち着いているが、不安要素は拭えない。

 銅相場は22年1月に1トン当たり1万72ドルまで上昇し、その後も高値で推移する。同時に銅材料不足が続いている。電導性に優れる銅は、世界的に脱炭素化が進められる中で、EVの普及や、再生可能エネルギーの導入に伴う中長期的な需要増加、風力発電など新エネルギーのインフラ整備に伴う銅電線の需要増などが不足の要因とされる。

 このほか、はんだ合金組成のニッケルも価格が急騰して過去最高値を更新している。

 ■低融点はんだ

 カーボンニュートラルに対する関心がSMT業界でも確実に高まる中で、低融点はんだが注目されている。はんだの融点が低いことは、はんだ槽の省電力化のみならず、実装工程の簡略化などソルダリングのさまざまなプロセスにおいて好影響を及ぼし、その結果がカーボンニュートラルにつながる。

 一般的に、はんだはBi(ビスマス)、In、Cd(カドミウム)などが含有されることで、融点が183度未満に下がる(SAC305は200度)。Sn-Bi系低温はんだはフローソルダリングで使用するとドロス(はんだ槽の表面に浮いているはんだの酸化物で、プリント基板のはんだ不良の原因になる)が多く発生する。Sn-Bi系合金は延性が低いといった課題がある。課題解決に向けて、各社ははんだ材料やプロセスの改良に取り組んでいる。