2022.12.13 日立金属 新開発のマグネシウム合金 高い生体親和性、医療器具分野に期待

開発された合金

素材開発をアピールする同社のブース素材開発をアピールする同社のブース

持続可能な素材関連のソリューションが多く披露された同展持続可能な素材関連のソリューションが多く披露された同展

 日立金属(来年1月に「プロテリアル」に改称予定)は、物質・材料研究機構(NIMS)と共同で、希土類元素フリーでありながら、高い延性と強度を両立する新しいマグネシウム合金を開発した。生体為害性(生体に害をもたらす性質)があるとされる元素や、生体環境下で分解しにくい析出物を含んでおらず、生体親和性にも優れる。モビリティーや福祉、医療器具など成長分野において用途開発を図る。

 千葉市美浜区の幕張メッセで先週開催された「第2回サステナブル マテリアル展」で、こうした素材開発を含め、幅広く披露した。

 輸送時の脱炭素が求められるモビリティー分野や、取り扱いやすさが求められる車いすなどの福祉用具分野では、部材の軽量化に加え、強度や優れた加工性が必要で、高い条件を満たす材料が望まれる。

 また、インプラント治療で使用するステントや骨折固定材など医療器具分野では、優れた機械特性(強度・延性)や高い生体親和性のほか、損傷部位の治癒とともに生体に吸収される生体吸収性を有する材料に関心が寄せられている。

 実用化されている金属材料では、最も軽量で生体吸収性を持つマグネシウム合金が注目される。ただ、適用製品の拡充に向け、さらなる高強度化や加工性の向上などが求められていた。

 両者は、高い延性と強度を持つだけではなく、生体為害性元素や難分解性物質を含まない高い生体親和性を持つ高延性・高強度マグネシウム合金を共同開発した。微量添加元素の選択で、延性と強度のコントロールが可能だ。

 さらに、生体為害性の指摘のある元素や生体環境下で分解しにくい析出物を含まない。高強度でありながら延性に富むため、押し出し・引き抜きや圧延など、顧客の用途に合ったサイズ・形状で容易に成形加工が行える。

 日立金属がマグネシウム合金を開発段階から手掛けるという注力分野。

 同社は「高い延性と強度を両立し、健康長寿命社会や低炭素社会を支える材料として期待できる。これらの関連市場に向けたソリューションとして展開を進める」と展望を示した。