2023.01.10 【製造技術総合特集】半導体・電子部品実装工程の融合と1STOP SMART SOLUTION ヤマハロボティクスホールディングスの生産現場イノベーション

ヤマハ発動機の「YRM20」

ヤマハ発動機の「YRM20」ヤマハ発動機の「YRM20」

ヤマハ発動機のプレミアム印刷機「YSP10」ヤマハ発動機のプレミアム印刷機「YSP10」

ヤマハ発動機の「1STOP SMART SOLUTION」によるSMT工場イメージヤマハ発動機の「1STOP SMART SOLUTION」によるSMT工場イメージ

最先端ロボ技術でSMT機器開発

 半導体後工程と電子部品実装工程(SMT工程)の融合が進み、設備をトータルで提案する動きが顕著になっている。ヤマハ発動機の事例をみた。同社は「1STOP SMART SOLUTION」を掲げて、ボンディングなど半導体後工程と、電子部品実装工程が1ブランドで全てそろう提案を推進している。

独自のコンセプト

 近年の目まぐるしく変化する世界で、社会と人々の安心と幸福を追求・持続するために、エレクトロニクスのさらなる進化が求められており、それを支える重要なテクノロジーの一つが表面実装技術(SMT)である。

 当社は最先端のロボティクス技術を駆使してSMT機器を開発し、エレクトロニクスの未来に貢献するべく、独自のコンセプト「1STOP SMART SOLUTION」を提唱している。

 この「1STOP SMART SOLUTION」は①ワンブランドでSMT生産ラインの主要機器の全てをトータルで開発・製造するノウハウおよびリソースがあること②それぞれの機器が単品としてもトップレベルの高性能であること③生産ラインとして各機器を連携させる相乗効果によって、ワンブランド連携ならではの高度なソリューションや付加価値を実現できることーの三つの条件を満たすことで成立する。

 ヤマハ発動機は、高性能なSMT主要機器のフルラインアップ体制を完備しており、それらの機器を最新IT技術によるIoT・M2M統合システム「インテリジェントファクトリー」によって相互にブラックボックスの無い高度M2Mでつなぎ、高い相乗効果を発揮させる理想のコンセプト「1STOP SMART SOLUTION」を実現している。

段取り替え全自動化実現クリームはんだ印刷機など
中核担う最新製品

 「1STOP SMART SOLUTION」の中核を担う最新製品は次のラインアップになる。

プレミアム印刷機「YSP10」

 最高レベルの印刷性能と同時に、段取り替えの全自動化を実現したハイエンドクラスのクリームはんだ印刷機だ。

 ヤマハ発動機独自の3Sヘッドによって、印刷時のスキージアタック角度をサーボコントロールにより1度単位で変えられる。はんだ充塡(じゅうてん)力を自在にコントロールでき、スルーホール印刷にも対応する。シングルスキージ方式により印刷時の往路と復路での品質差を削減、スキージ交換時の着脱やメンテナンスも容易にできる。

 加えて、ステンシルのたわみの影響による往復印刷時の印刷オフセットずれを大幅に低減させると共に印刷時に基板とステンシルを密着させて安定印刷を可能とするマスク吸着機能などで高品質・高精度な印刷を実現。

 また、搬送時間削減や動的レイアウト最適化により、マスククリーニング込みの印刷サイクルタイムを約20%向上し高いスループットを実現した。

 さらに、印刷工程の人的工数削減に着目し、「自動プログラム切り替え」や「PSC(Print Stability Control)システム」による印刷安定制御などの従来機能に加え、新開発の「プッシュアップピン自動交換」「マスク自動交換」「はんだ自動移載」により段取り替えの全自動化を実現、生産効率の大幅向上と共に人為ミスを防止する。

 また、対応基板サイズの拡張や、クリーニングペーパー消費量の最大80%削減など、基本性能と対応力を共に向上させた。

プレミアム高効率モジュラー「YRM20」

 「YRシリーズ」次世代型プラットフォームを採用した、革新的な万能高速マウンター。

 超高速ロータリー型「RMヘッド」と「1ヘッドソリューション」コンセプトを高次元で実現した高速汎用(はんよう)インライン型「HMヘッド」、部品対応力を重視した異形対応インライン型「FMヘッド」の3種類のヘッドから自由な組み合わせで選択が可能。高耐久の高速「ZSRフィーダー」との組み合わせにより、2ビーム2ヘッドクラストップレベルの11万5000CPHの圧倒的な搭載能力を実現。同時に、新設計のXビームによる熱歪み低減などにより、プラスマイナス25マイクロメートルの高精度実装を実現し、0201(ミリメートル)サイズ極小チップ部品実装に対応する。

 また、「ノンストップ供給」や「まとめ補給」によりダウンタイムを大幅削減した自動トレー供給装置「eATS30」と、コストパフォーマンスが高くコンパクトな自動トレー供給装置「cATS10R」から、自由な組み合わせで最大2台まで装備が可能。加えて、さまざまな部品データ作成支援機能により、新規生産時の垂直立ち上げを強力にサポートする。

3Dハイブリッド光学外観検査装置「YRi-V」

 2D検査、3D検査、4アングル画像検査を1台に搭載する汎用性と共に、高速・高解像度のカメラを搭載した新開発検査ヘッドや高性能GPUの採用により、業界最高レベルの検査能力を実現した、ハイエンドクラスの3D光学外観検査装置。

 3Dプロジェクタの刷新や、従来の分解能12マイクロメートル、7マイクロメートルに加えて分解能5マイクロメートルレンズの新設定により、計測精度と計測レンジをともに従来機比2倍に向上させ、0201極小チップ部品や狭隣接部品に対して、高解像かつ部品の死角に影響されない撮像による高精度かつ高速な3D検査が可能であると同時に、これまで難しかった鏡面部品の傷・割れ・欠けへの対応を強化し検出力を向上した。また、デュアルレーンラインや最大L610ミリメートル(OP=L1200ミリメートル)×W610ミリメートルの大型基板にも対応。

 さらに、機能の自動化や人工知能(AI)・ディープラーニングの採用などにより、検査データの作成・変換・チューニングを簡易化・スキルレス化し、扱いやすさを大幅に向上させた。

期待超える価値の創造

事業統合を成立

 ヤマハ発動機ではこの「1STOP SMART SOLUTION」コンセプトを、ヤマハブランドのロボティクス事業を俯瞰(ふかん)するコンセプトに昇華させるべく、長年の実績を持つ前述のSMT事業と産業用ロボットのFA事業の2本柱に加えて、半導体後工程の機器メーカーである新川、アピックヤマダ、PFAとの事業統合を成立し、日本発のトータルソリューションプロバイダーとしてヤマハロボティクスホールディングス(YRH)を設立した。

 そして、今後の展開が期待されている半導体後工程から電子部品実装工程と製品組み立てまでのプロセス融合に対して「1STOP SMART SOLUTION」による高度なトータルソリューションを美しくスマートに実現させ、お客さまの期待を超える価値の創造を目指す。エレクトロニクスの生産現場に、さらなるイノベーションをワンストップで提供可能とする体制を推進していく。

〈筆者=ヤマハ発動機〉