2023.01.18 【情報通信総合特集】市場/技術トレンド サポートサービス
全国拠点網を生かしたマルチベンダー保守がさらに加速する
24時間365日体制で保守運用 技術者の育成、AI技術活用でDXさらに加速
ICT(情報通信技術)機器や設備機器を安定して動かす支援を行うサポートサービス企業の役割が、これまで以上に重要になってきた。企業や社会インフラを支えるさまざまなシステムを止めずに動かす要望が増える半面、保守や運用の品質を担保しながら全国で支援できる企業は限られることから、全国に拠点を持ち保守支援ができるメーカー系サポートサービス企業への引き合いが増えている。23年はこの流れがさらに加速しそうだ。
国内のICT機器のサポートサービス関連市場は、機器単体を保守する従来型の保守案件は減少傾向にある。一方で、情報システム全体を安定して運用していく要望は高まっており、特にベンダーや機器に依存しないマルチベンダー保守を求める声は多い。ICT機器や設備機器を販売するメーカー側も、販売した機器の保守支援を求めるところが増えてきている。
こうした要望に対応するのが、主要メーカー系サポートサービス企業だ。NECグループのNECフィールディングをはじめ、富士通グループの富士通エフサス、日立製作所グループの日立システムズ、OKIグループのOKIクロステック、東芝グループの東芝ITサービスなどがあり、事務機系ではリコージャパンも幅広くサポートする。
各社は全国に拠点を構え、コンタクトセンターやデータセンター網を備える。24時間365日体制で保守運用をしているところも多い。この数年各社が進めているのがマルチベンダー保守で、最近はセキュリティー支援なども含めて対応するところが増えてきた。
ベンダーに依存しないので、複雑に構築されたシステムをワンストップで保守対応したり、ICT機器以外の設備も含めて保守対応したりするなど、対応の幅を広げている。
全国規模の拠点網と保守体制はユーザー側だけでなく機器を販売するベンダー側にも大きな魅力。中でも海外ベンダーは国内に保守拠点を持たないため、全国規模で保守網を持つサポートサービス企業に保守を委託するケースが多いという。
保守網の整備はメーカー側にとっても大きな課題だ。サポートサービス企業は保守網を有効に活用できることから、メーカーとサポート各社の新たな連携は、今後ますます増えてくるとみられる。
この一年の動きを見ても新規保守案件を獲得するためにWebサイトの改善などデジタルマーケティングに力を入れる企業が目立った。「外資系企業などはWebサイトからの問い合わせで新規保守契約につながることも多い」(サポートサービス首脳)といい、Webサイトの強化は各社の重点施策にもなっている。
ICT機器以外の保守を請け負うところも多く、機器の設置から保守まで総合的に支援する動きも活発だ。マルチベンダー保守では、OKIクロステックやNECフィールディングが医療機器の保守対応を強化していて、全国規模で資格を取得し支援体制を整える。医療機器の多くはコンピューター化されているため、ICT機器の保守ノウハウを生かした対応も可能。病院などの医療システムから医療機器までワンストップで支援する提案を始めている。
太陽光発電システムの施工と保守を手掛けるところも多い。NECフィールディングや日立システムズ、OKIクロステック、東芝ITサービスなどはカーボンニュートラルの観点から、エネルギー分野のサポートを強化。ソーラーと蓄電池を組み合わせて運用する提案なども本格化している。
セキュリティーも含めた支援を始めるところも増えてきた。東芝ITサービスや日立システムズはSOC(セキュリティー運用センター)を強化して対応しており、今年はセキュリティーを含めたサポートもキーワードになる。
新たに、メーカーなどが取り扱う機器を複数丸ごと保守サポートする動きも出ている。自社で保守対応していたメーカー側も保守網を維持することがコスト面でも難しくなっている。専門に展開しているサポートサービス各社のインフラを使った方が保守品質を担保しながらコストも削減できるため、一括した委託契約などがこの先出てくるとみられる。
サポートサービス各社も、幅広い保守対応ができるよう、技術者育成とともに、人工知能(AI)など最新デジタル技術を活用した保守支援を強化している。スマートグラスを使った支援や、スマートフォンやタブレットを使った保守支援も推進。今年は保守サポート分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)もさらに進みそうだ。