2023.01.17 【半導体/エレクトロニクス商社特集】進化する半導体プロセス 後工程に新たな発想

半導体製造プロセスの後工程に関心が高まっている

インテルの3D実装プロセッサーインテルの3D実装プロセッサー

AMDの八つのチップレットを搭載した新しいサーバー向けプロセッサーAMDの八つのチップレットを搭載した新しいサーバー向けプロセッサー

 半導体は、EUVリソグラフィーによる微細化が限界に近づきつつある中で、製造プロセスにおいてもパッケージング技術など後工程に対する新たな発想が生まれ、進化しようとしている。

 半導体製造に関わる技術・装置・材料の国際展示会「セミコンジャパン2022」(SEMIジャパン主催)が、昨年12月14日から16日まで東京都江東区の東京ビッグサイトで開催された。

 今回、新たに半導体パッケージングおよび実装分野の最新技術の展示・カンファレンス・ネットワーキングを組み合わせた大型イベント「APCS(Advanced Packaging and Chiplet Summit)」も同時開催した。

 半導体製造プロセスにおける新たなトレンドにフォーカスし、半導体業界の関心を集めた。

3D実装技術

TSMCやインテルなど投資拡大

 半導体業界は、シリコン上に集積される素子は毎年2倍ずつ増加するというムーアの法則に沿い、ICの高集積化で成長してきた。

 ICの集積化は、その素子の数によりLSI(Large-Scale Integration、大規模集積回路)、VLSI(Very Large-Scale Integration、素子が10万~1000万個)、さらにULSI(素子が1000万個以上)、さらにシステムLSI(超多機能LSI)と進んできた。

 EUVリソグラフィーの実用化で配線幅10ナノメートル以下の配線も現実となり、今では2ナノメートルの時代に入っている。しかし、原子より小さいサイズでの配線は不可能であり、開発や製造のコストも膨大になることから、実装技術(パッケージング技術)の開発が重要になっている。その一つのプロセスとしてICデバイスを縦方向に積層する3D(3次元)実装技術が注目されている。

 同技術はシリコンウエハー上で電子回路を形成し、薄片化した半導体ウエハーを3Dに積層化して、層間をTSV(シリコン貫通電極)を使って通電させるため、半導体の小型化/高密度化/省電力化、さらに信号伝送と処理速度の高速化など、数多くのメリットが生まれる。具体的には、演算を行うロジックチップとメモリー、アナログデバイス・センサーなどをワイヤボンディングなどで3次元方向へ実装して一つのパッケージに統合する半導体デバイスが量産されている。

 3D実装技術の開発には、台湾TSMCや米インテルなどロジックの前工程分野をリードしてきた企業も投資を拡大し、集積技術や先端パッケージング技術開発を競っている。

チップレット

微細化に頼らず小型化・機能向上

 もう一つ注目されている製造プロセスが「チップレット」と呼ばれる2Dの混載技術。CPUやGPU、SRAMなど、それぞれ最適なプロセスノードや装置で製造されたチップをレゴブロックのように組み合わせ、1枚のインターポーザー上に配置してSoP(システム・オン・パッケージ)技術で1パッケージに収納する。

 これにより、微細化に頼らず半導体の小型化や機能向上を実現。各チップのサイズを小さくできるため歩留まりも向上し、市場投入までの期間を短縮できる。米AMDはこれをパソコン用CPU「Ryzen」やサーバー用「EPYC」にいち早く採用。モノリシックダイを採用する米インテルの競合プロセッサーを性能で上回り、AMD躍進のきっかけをつくった。AMDはその後、CPUダイにSRAMを縦方向に積層した「3Dチップレット」技術も開発し、CPUの性能の大幅向上を図っている。

 TSMCは半導体製造の前工程に加えてパッケージング技術にも注力している。2D混載技術「CoWoS(コワス)」や「InFO(インテグレーテッド・ファンアウト)」などを提供するほか、これらと組み合わせる3D実装技術「SoIC(システムオン・インテグレーテッド・チップ」も開発している。

 パッケージング技術には、インテルや韓国サムスン電子も本格的に取り組んでいる。

半導体メモリーのパッケージング

用途に合わせ様々な種類がそろう

 半導体メモリーは、大きく「揮発性」と「不揮発性」の2種類に分けられる。揮発性メモリーはRAM(Random Access Memory)などのように、電気が通っているときのみデータの記録が行え、主にパソコン(PC)のメインメモリーとして使用されることが多く、PC上でOSやアプリケーションが動作する際の作業スペースの役割を果たす。

 一方の不揮発性メモリーはROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリーのように、電源を切った状態でもデータを保持でき、SSDやUSBメモリーなどといった、データを保存・記録するためのストレージ(記憶媒体)として使用される。

 半導体メモリーはDRAM、SRAM、マスクROM、ワンタイムPROM、EPROM/EEPROM、NOR/NANDフラッシュメモリー、FeRAM(FRAM)、MRAM(磁気抵抗メモリー)、ReRAM(抵抗変化メモリー)、PCM(相変化メモリー)など、さまざまな種類がある。用途に合わせて電気特性、パッケージサイズ、リードの配置やそれぞれの機能などが世界共通の規格として標準化されている。

 DRAMのパッケージングはリードフレームの代わりにリジッド基板が用いられるパッケージが多い。技術的に開発が続いているのがHBM(超広帯域メモリー)で、TVSを用いたチップスタックのパッケージになっている。NOR/NANDフラッシュメモリーもチップスタック技術を用いる場合が多い。

 SRAMやEPROMは、従来型のプラスチックパッケージが主流になっている。