2023.01.26 【水晶デバイス特集】製品動向 技術力生かし先端品開発を強化
ADAS/自動運転技術の高度化が水晶デバイス需要を拡大させる
日系水晶デバイスメーカー各社は、高い技術力を生かした先端品開発を強化している。5GやADAS/自動運転などで求められる高度な技術要求に対応した製品をタイムリーに開発・供給することで、差別化を促進する。
車載電装システムの高度化や、5G通信の本格化、さらにBeyond5Gといった動きは、水晶デバイスへの技術要求を一層高度化させている。従来以上に小型で、高精度、高安定性が要求され、さらなる品質向上も求められている。このため日系水晶デバイスメーカーでは、キーマテリアルである人工水晶の育成から高付加価値のプロセス技術まで、新たなシステムの導入を活発化させている。
大口径化進む
人工水晶は、特性のバラつきがない高品質な水晶ブランクを育成するための技術開発が活発。生産性向上のため、ウエハーサイズの大口径化も進む。
さらに5Gスマートフォン向け水晶振動子などでは、超小型化かつ高周波対応のため、従来の機械加工に加えて、前工程での独自のフォトリソグラフィー加工技術の導入による水晶片の高精度加工なども追求されている。こうしたフォトリソブランク技術は、日系水晶デバイスメーカーが海外競合企業との差別化を図る上で大きな強みとなっている。
組み立て工程でも、自動化やロボット化を通じた小型・高精度化などが追求され、高度な技術要求に対応している。
5Gスマホ用水晶デバイス開発では、小型・薄型化の追求とともに、通信品質の向上を目的とした周波数の高精度化、低ノイズ化、高周波化に対応した技術開発が進展。特に最近のスマホでは、1充電当たりの動作時間長寿命化を実現するため、限られたスペース内で内蔵バッテリー積載量を増大させる方向にあることから、バッテリー以外の電子部品には一層の軽薄短小化が要求されている。
こうしたニーズに対応するため、水晶デバイスのパッケージの小型・薄型化が進み、温度センサー内蔵水晶振動子では、1210サイズなどの小型・薄型化が進んでいる。
5Gスマホ用超小型水晶振動子は、1210サイズから1008サイズへのシフトが進んでいる。1008サイズ品の需要は、5Gスマホのほか、ワイヤレスイヤホン、スマートウオッチなどのウエアラブル端末用途でも増加しており、2023年も引き続き成長が見込まれる。
TCXO(温度補償型水晶発振器)も、セラミックパッケージの薄型化、水晶チップの小型化、封止技術などにより、1612サイズが実用化され、さらに1210サイズ品も開発されている。
5G基地局用では、5Gで多用される小型基地局装置の内部搭載用に、高密度実装に対応し、高温・多湿の外部環境変化に対しても安定した動作が可能で良好な位相雑音特性を有するOCXO(恒温槽付き水晶発振器)などの開発が進む。OCXOを構成する発振回路、温度制御回路などの全てを1チップに収めた専用ASIC開発により小型化を図るとともに、高Q原石(不純物が極めて小さい高安定用の人工水晶原石)による小型SC-cut振動子開発で高安定・低雑音が図られている。
車載用では、CASEに照準を合わせた高性能で高品質の水晶デバイス開発が進展。ADAS/自動運転の高度化は、車1台当たりでの水晶デバイス搭載点数増加に直結するため、これらの構成要素である車載カメラやミリ波レーダー、LiDAR(ライダー)などに向けた新製品開発に力が注がれている。
車載用電子部品には高温対応や耐振動・耐衝撃などで厳しい仕様が要求される。特にエンジンルーム搭載EUCなどでは、より高度な耐熱技術や耐振性能が求められている。
車載用水晶デバイスの小型化も進んでいる。08年ごろの段階では、車載用振動子は3225サイズ程度が最小サイズだったが、車の電子化・高機能化に伴うECUの高密度実装化などに伴い、その後は、2520サイズ、2016サイズ、1612サイズへの小型化が進展している。
自動車1台当たりで使用される水晶振動子の個数は、通常の車両では30個から40個程度。高級車では100個以上が使用されるケースもある。車1台当たりの水晶デバイス搭載点数は、自動車の高機能化に伴い、今後も毎年増加していく。数年後には、車載5G適用に伴う新たな需要創出も期待されている。