2023.03.16 【スイッチ特集】製品別動向

車載用タクトスイッチ

多機能化で搭載数量が年々増加

車載用スイッチ

 自動車には、多くの操作/検出スイッチが搭載される。コックピットのフロントパネル周りのほか、ハンドル周りやドアモジュール部にもスイッチが多用され、ボンネットやトランクの開閉検知、車室内照明操作などにも使用される。

 特に検出系スイッチは、車室内機能の多機能化に伴い、車1台当たりの搭載数量が年々増加している。

 車載スイッチへの技術要求は、小型・軽量かつ堅ろう/高信頼性に加え、防水防じん、耐振動/衝撃性、長寿命、耐環境性(耐高温/低温)、良好な操作感触、静音化など多彩。特にプレミアムカーに搭載される操作系スイッチには、良好な操作フィーリングや高級感のある操作音が要求される。

 スイッチメーカーでは、長年培ってきたノウハウを活用し、顧客との擦り合わせを通じた操作感触の作り込みなどによって差別化を図っている。

 安全性向上のため、ドライバーが前方から目を離すことなく操作できるスイッチ開発や、振動などのフィードバック機能付きデバイスの開発も進んでいる。

 安全運転に寄与するスイッチの取り付け場所の選定なども重視される。車の電子化が進展する中で、冗長性を確保するために、2回路/3回路/4回路の検出機能を搭載した車載用検出スイッチなども開発されている。

小型・高性能などに加え防水機能の重要度高まる

携帯端末用スイッチ

ウエアラブルデバイス向けのドームスイッチ

 携帯端末用スイッチ開発では、小型・薄型・軽量化と高強度・高信頼性・長寿命などの技術要件を同時に満足させることが必要。最近のスマートフォンでは、防水機能の重要度も高まっている。民生機器用スイッチを手掛けるメーカーでは、こうした要求に応えるため、シミュレーション技術や材料技術などを駆使した高度な設計開発を進めている。

 スマホなどの携帯端末1台当たりのスイッチ使用数量は、タッチパネル操作へのシフトが進んだ影響で全体では減少しているが、米アップルのiPhoneなどの高級機では小型薄型スライドスイッチなどへの根強い需要がある。ウエアラブル端末需要の拡大やIoT関連需要の広がりも、民生用の超小型高性能スイッチの需要を創出するものとして期待されている。

 モバイル端末市場での厳しいコスト要求に対応するため、スイッチ各社は、効率良く大量生産を行うための独自の自動機開発を進めることで、生産性の向上に努めている。

 リモコンスイッチでは、Android搭載家電やSTB(セット・トップ・ボックス)向けに、音声検察機能を搭載した無線通信リモコンなどの高付加価値リモコンが開発されている。

作業性や安全性向上などを追求

産業機器/インフラ用スイッチ

非常停止押ボタンスイッチ

 産業用スイッチメーカーでは、産業機器・装置の高機能・高性能化や作業性・安全性向上などを追求した製品開発に力を入れている。

 産業用スイッチの用途は、FA機器やロボットをはじめ、工作機械、半導体製造装置、通信・放送用設備、電力機器、建設機械、農業機械、各種社会インフラ、航空宇宙関連など多彩。

 産業機器/システムでは、誤作動のない正確な動作が必要となるため、スイッチにも高い信頼性が求められる。このため、産業用スイッチ各社は、堅ろう性や長期信頼性、耐環境性、優れた防じん防水性能などを備えた新製品開発や製品バラエティー拡充に力を注いでいる。

 最近は、新規市場開拓に力を注ぐ産業用スイッチメーカーも多く、車載展開強化の一環として、IATF16949の取得などを進める企業も見られている。

 今後の成長が期待される医療機器市場への取り組みを強化するメーカーもみられる。スイッチは以前から医療関連機器でも使用されてきたが、医療分野向けに特化した専用部品はバラエティーに乏しく、多くの医療機器メーカーは一般的なFA機器などに使用される標準部品(汎用〈はんよう〉スイッチ)を使用するケースが多かった。

 だが、最近は医療機器技術とエレクトロニクス技術の融合が進み、国内外での競争が厳しくなる中で、医療機器における操作性向上も重視されるようになっている。

 そうした中、スイッチメーカーでは医療機器向けに、医療機器で求められる厳しい品質や信頼性要求を満たしつつ、操作感触を向上させたスイッチの提案に力を注いでいる。

 今後の需要拡大が見込まれる再生可能エネルギー関連分野に照準を合わせた技術開発や、技術マーケティングに注力する企業も多い。