2020.02.05 【ICT展望2020】アイコム 播磨正隆社長

播磨正隆社長

アマチュア無線機、大切に売る
積極的に5G取り組み

 ―市況はいかがですか。

 播磨社長 19年10-12月は消費税増税の影響で需要の前倒し分の売上げが落ちると見ていたが、計画通りに進んでいる。現状では19年度通期業績は予想通りにいけそうだ。ただ、海外は全体的にあまり良くない。20年度は、過去最高の331億円を売り上げた07年度を超えたい。

 そんな中でもIP無線機は好調だ。空港、鉄道や地下鉄など交通機関、インフラ、警備といった幅広い業種で活用されている。

 成田空港では各航空会社合わせて約2000台のIP無線機が使われている。大阪メトロでは約400台のIP無線機が、ほぼ全エリアで使用されている。

 携帯電話キャリアのauとNTTドコモの通信回線を使うため月額1800円の回線料が必要だが、便利だと評価は高い。無線は無料というイメージがあったが、IP無線機でそのイメージが払拭(ふっしょく)された。

 業績面でも毎月、回線料収入が得られるストックビジネスだ。現在、月1億円弱の回線料収入を計上できている。レンタル無線機は、ほぼIP無線機に切り替わった。海外においても月1000局に増やしたいが、まだ月販何百台レベルのため、達成できていない。ワールドワイドでしっかり売りたい。

 ―アマチュア無線機も良いようですね。

 播磨社長 19年3月に投入したIC-9700は12月末までに約8500台販売した。そのうち2000台が日本だ。アマチュア無線人口が減り、日本でも40万人といわれている市場だが、RFダイレクト・サンプリング方式、リアルタイムスペクトラムスコープ、ウオーターフォール表示をVHF/UHFアマチュア無線機で初めて採用したことなどが評価されて、大ヒットしている。

 税別価格18万8000円と、特定小電力トランシーバの約18倍の単価商品のため、IC-9700だけで10億円を超える売上げになっている。

 アマチュア無線機に頼りすぎずにやるが、大切に売っていきたい。魅力ある新製品を発売すれば売れる。発売前に予約販売できるのもアマチュア無線機ならではといえる。

 ―今年は日本も5G元年といわれていますが、5G関連ビジネスは。

 播磨社長 5Gの使用周波数から見て、当社がやれるところがあると考えている。5Gのニッチな部分など、手がけられるものを探していきたい。測定器は高額だが、投資できる環境にあるため、積極的に取り組む。携帯電話キャリアとも、IP無線機でau、NTTドコモの回線を借りており、5G回線借りも交渉のテーブルには着ける。

 昨年4月に発売したイリジウム衛星通信トランシーバシステム「サテライトPTT」も自治体に数台販売したが、まだ予算取りの段階だ。20年から売れ始めるだろう。

 ―生産の自動化は進んでいますか。

 播磨社長 業界初の、ロボットによる無線機の完成品完全自動組み立てラインを和歌山アイコム有田工場(和歌山県有田川町)に1ライン入れた。ハンドヘルド機を生産しており、稼働率が80%に近づいてきた。

 水平展開して機種数を増やしていく。5、6月ごろには2ライン目を入れ、携帯機を生産する予定だ。3年後にはスマートファクトリー化すると言いたいところだが、2、3年ずれ込むかもしれない。