2023.05.12 【育成のとびら】〈2〉入社前後のポジティブなギャップについて

アドバイスの「細やかさ」がカギ

上司は伴走の姿勢を

 五月病は日本特有の現象と言われている。海外でも似たような概念はあるが時期が異なり、例えば1月や3月を年度始めとする韓国では五月病に似た現象が3月に起こるそうだ。

 国や文化が違えども新しい環境に進む際の不安やストレスは万国共通のものなのだろう。

 2022年7月、当社ラーニングエージェンシーは、全国の1年目新人300人を対象に「入社前後の理想と現実のギャップ」について意識調査を行った。

 結果は、新人の約半数が「社会人としての生活リズムや考え方の習得」を想定より難しいと感じていたこと、このネガティブなギャップが新人の「離職意向」の引き金となり、約3割が「会社を辞めたくなった」と感じていたことは前回述べた。

 今回は、1年目新人が感じた「入社前後のポジティブなギャップ」に着目し、前回と違う側面から離職防止のヒントを探っていく。

 1年目新人に対し「入社前の想定とどのような違いがあったか」を質問したところ、ポジティブなギャップの最多回答は「上司とのコミュニケーション」(26.3%)、次いで「上司からの仕事のアドバイス」(24.4%)だった。「上司との関係性」が想定より良いと感じた新人が多かったことが分かる(図1)。

 当社はこのギャップの影響を調べるため、ネガティブ・ポジティブ問わず上司との関係性にギャップを感じた新人に追加質問を行った(図2)。

両極端な傾向に

 その結果、上司とのコミュニケーションのギャップの捉え方として「安心した」が24.3%と最も多かったが、次いで「辞めたくなった」が20.8%となり、両極端な傾向が明らかになった。

 このような両極端な傾向が見られた項目はほかになく、上司とのフランクな(気取らない)関係性が新人の離職意向に与える影響がいかに大きいかがうかがえる。

 また、上司からのアドバイスにおいて新人が「細やかさ」を重視することもわかった。アドバイスが細やかな職場では「成長の機会」「貢献したい」と捉える新人が多かったのに対し、「細やかでない」「もらえない」現場の新人からは「辞めたい」という回答が多かった。

 マイペースで世代間交流の経験に乏しいとされがちなZ世代新人の離職意向が上司との関係性に大きく左右されている今回の結果を意外に感じる方もいるだろう。

 しかし、彼らの多くが上司にフランクな交流と細やかなアドバイスを期待しているのは事実で、むしろ想定より関係が薄い状態は離職意向や不安を抱かせやすい。

Z世代新人を理解

 大型連休も明け、これから多くの新人が現場配属へと進んでいく。五月病にかかり、つまずいてしまう者もいるかもしれない。この時期の上司には、彼らの足取りや、どこでつまずきやすいのかを理解し、細やかにフォローする〝伴走〟の姿勢が求められている。(つづく)

 〈執筆構成=ラーニングエージェンシー〉

 【次回は5月第4週に掲載予定】