2023.07.06 化学メーカー各社、新中期経営計画を相次ぎ発表
経営戦略説明会で中期戦略を説明する三菱ケミカルグループのジョンマーク・ギルソン社長
化学メーカー各社の新中期経営計画の発表が相次いでいる。各社は、成長領域に、モビリティ、次世代通信、次世代半導体、デジタル社会基盤、サステナビリティ関連、ライフサイエンス関連などを掲げ、イノベーションを通じた継続的な成長を目指す。
化学各社を取り巻く足元の事業環境は、米中摩擦激化や中国経済低迷長期化、高インフレによる欧米でのリセッション懸念、エネルギー価格高止まりなど不透明要素も多いが、様々な社会課題に対するソリューションを提供することで、未来社会への貢献と企業価値向上を目指す。
各社の新中計での投資戦略も積極姿勢が見られている。脱炭素/カーボンニュートラルに向けた事業戦略やサステナビリティ戦略、ESG戦略も一段と重視されている。
日本ゼオンは、23年度(24年3月期)からの中期経営計画第2フェーズ(4カ年)を公表。30年度を最終年度とする中期経営計画『STAGE30』の第2フェーズとして策定した。26年度経営目標に、売上高5100億円、営業利益580億円、既存事業ROIC9%などを掲げる。
既存事業では、COP売上高の光学・医療用途での拡大とともに、電池材料は世界のEV市場の成長を取り込み、26年度に向けて大幅な拡大を目指す。差別化製品を軸にポートフォリオ転換を図り、26年度には連結売上に占める高機能材料事業構成比を37%まで高める。26年度の新規事業売上160億円を目標に置く。4カ年累計約2200億円の投資を計画する。
東レは、23年度(24年3月期)からの中期経営課題『プロジェクトAP-G2025』(3ヵ年)を発表した。サステナビリティイノベーション(SI)事業とデジタルイノベーション(DI)事業を柱に、持続的かつ健全な成長を目指す。25年度財務目標は、売上収益2兆8000億円、事業利益1800億円、事業利益率6%、ROIC約5%、ROE約8%など。3ヵ年累計設備投資は5000億円を予定し、5割強を成長領域に重点投資する。
三菱ケミカルグループは今年2月、25年度までの経営方針『Forging the future 未来を拓く』に基づく今後の詳細な実行計画を策定するとともに、25年度財務目標をアップデートした。25年度の売上やEBITDA目標を増額し、25年度EBITDA目標を当初の5400~5600億円から約6000億円に変更した。
事業成長戦略では、スペシャリティマテリアルズへのシフトを軸に、機能商品、産業ガス、ヘルスケア、MMAの主要事業でのEBITDA増加を目指す。
積水化学工業は、23年度(24年3月期)からの中期経営計画『Drive2.0』(3ヵ年)を発表した。長期ビジョン『Vision』に向けたセカンドステップとして「持続的成長」と「仕込み充実」を方針に取り組む。25年度には、売上高、営業利益、当期純利益ともに過去最高更新を計画する。
中計基本戦略は①戦略的創造②現有事業強化③ESG経営基盤強化。戦略的創造では、革新領域で7つのテーマ(ペロブスカイト太陽電池、バイオリファイナリー、航空機分野展開、次世代通信部材、スマートシティ戦略、インフラ材海外展開、医薬新領域)を選定。戦略投資枠4500億円を含むトータルでの3ヵ年投資額は累計6000億円。
信越ポリマーは、23年度(24年3月期)からの新中期経営計画『Shin-Etsu Polymer Global&Growth』(5ヵ年)を発表した。事業戦略に、基盤領域での販売力強化と生産性向上、成長領域での新規需要取り込み、海外売上比率拡大を掲げる。成長領域にEV関連製品や半導体関連製品、機能性材料などを位置付け、新規需要獲得を推進する。
(詳細記事は、電波新聞7月7日付で掲載)