2023.07.11 【家電総合特集】IoT家電

IoT家電の普及は省エネや環境配慮にも貢献する。冷蔵庫の場合、庫内確認ができ、食材ロス削減につながる

IoT調理家電は購入した後も、メニューのダウンロードなど、機能を追加できるIoT調理家電は購入した後も、メニューのダウンロードなど、機能を追加できる

ネット接続で遠隔操作など可能

各社、本格普及へ本腰

 アフターコロナの段階を迎えて人々の暮らしにも変化が現れ、家電業界では、今後さらに多様化するユーザーニーズに応える商品開発が活発だ。

 こうした中、暮らしの質をより高める家電の機能として、ハード自体の進化に加え、IoT機能を搭載した家電製品の普及が進みつつある。

 テレビについては、今ではネットにつながるスマートテレビがスタンダードとなっているほか、白物家電ではルームエアコンや冷蔵庫、洗濯機、オーブンレンジ、炊飯器、空気清浄機、エコキュートといった主要なカテゴリーでIoT化が進んでいる。

 IoT家電(スマート家電)は、家庭にあるWi-Fiネットワークを経由してインターネットに接続し、専用アプリをダウンロードしたスマートフォンから、遠隔でもさまざな設定・操作が可能になったり、買った後から機能を追加できたりする。

 IoT家電の普及はまだ途上にあるものの、家電各社は近年IoT家電のラインアップ拡充に力を入れており、普及の速度が速まってきた。

 ユーザーにとっては、IoT化で利便性が向上するほか、安心・安全、省エネにもつながり、快適な暮らしの実現に貢献する。そのため、満足度は高く、積極的に活用するユーザーも確実に増えている。

 メーカーによると、例えばエアコンの場合、外出時の切り忘れを外出先で操作できた、あるいは電気代の見える化で省エネの意識が高まった、といった高い満足度の声が返っているという。

 実際にいま、物価や電気代の高騰が生活者を悩ませているが、IoT家電による、省エネへの意識向上や、最適な操作による無駄な運転の抑制といった特長は導入メリットの一つとなる。

 電気代の見える化によって、IoT冷蔵庫であれば無駄な開け閉めをやめて電気代を削減しようという省エネ行動につながるし、冷蔵庫の中身の食材を確認できるため、食品ロスの削減にも役立つ。こうした点を積極的に訴求していくことで、ユーザーがよりIoT家電に目を向けることになる。

 今後のIoT家電の普及加速に向け、メーカー各社では、IoT家電のラインアップ拡充とともに、多様なサービス・ソリューションの開発を図り、顧客にとってより使い勝手が高まる施策を強化している。

 IoT家電の分野では、シャープがAIoT対応家電の展開に早くから力を入れており、市場をけん引している。同社によると、AIoT対応家電は12カテゴリー845機種まで増加した(6月時点)。

 同社はもっと顧客に寄り添い、使ってもらえるようなAIoT家電同士の連携、サービス・ソリューションの開発に力を注いでいく。24年度にはネット接続率80%以上(国内)、AIoT対応家電の販売額7割以上を目指している。

 「新製品の進化と購入後も進化し続けるAIoTを目指す。家電同士や住設機器との連携強化、調理家電のメニュー提案の充実などを進め、ネットにつながるメリットをユーザーに十分感じてもらえるよう取り組む」と菅原靖文執行役員Smart Appliances & Solutions事業本部長は話す。

 パナソニックは、IoT家電の販売構成比について、同社家電販売全体に対して24年度には6割まで高めていく方針だ。台数的には現状の2倍となる100万台規模を目指している。

 同社は、節約・節電志向が強まる中で家電製品を長く安心して使ってもらうためのサービスとして、IoT延長保証サービス(メーカー保証1年+2年保証)を用意した。

 延長保証サービスに加え、ネット接続によって、困り事や使いこなしに関する役立ち情報や便利機能の紹介、電気代の目安の可視化、スムーズな修理対応などを提供していく。

 また、三菱電機は冷蔵庫やエアコンなど同社製IoT家電を使った新たなサブスクリプション(定額課金)サービス「MeAMOR(ミアモール)」の提供を2月にスタートした。

 カメラなどの専用機器や設備が不要で、プライバシーを守りながら生活状況を見守ることができる。離れて暮らす高齢の家族の安心・安全につなげようと、社会課題の解決にIoT家電を有効活用するものだ。

 IoT家電の利便性を実感できるサービスやソリューションを今後一層拡充することによって、普及がさらに加速していく。