2023.07.12 高エネ密度で長寿命のコバルト・ニッケルフリー電池材料 橫浜国大などが発見

試作したリチウムイオン蓄電池

結晶構造結晶構造

 電池材料などの研究で知られる横浜国立大学の藪内直明教授やパナソニック エナジー、立命館大学などの研究グループは、高エネルギー密度で長寿命のコバルト・ニッケルフリーの電池材料の発見を発表した。リチウムイオン蓄電池の高性能化・低コスト化の両立実現につながると期待される。

 世界的に脱炭素社会実現への動きが加速し、電気自動車(EV)などに用いられるリチウムイオン蓄電池の市場が急拡大している。EVの価格低下を実現するためにも、同電池のさらなる高エネルギー密度化と低コスト化を目指して、世界中で活発な研究開発競争が進む。

 現状、欧米や日本で販売されているEVでは少量のコバルトを含むニッケル系層状酸化物を正極材料として多用。高エネルギー密度と低価格を両立する電池材料は、EVの低価格化やさらなる市場拡大に不可欠とされる。

 今回の研究では、新しいリチウム過剰型マンガン系酸フッ化物酸化物材料を開発し、コバルト・ニッケルフリーでありながら、高エネルギー密度・長寿命の電池正極材料となることを発見した。

 これまで、酸フッ化物材料は電解液に溶けやすいためサイクル寿命に課題があったが、濃厚電解液と組み合わせることで特性が劣化しないことも見いだした。

 コバルト・ニッケルフリーの材料を用いても高エネルギー密度化と低コスト化の両立が可能で、サイクル寿命に優れた実用的な電池材料として使える可能性を初めて立証した。今後の研究の進展により、鉄系材料と同程度のコストで、より高性能なものが実現できる可能性がある。