2023.08.15 半導体製造装置各社 生成AI向け需要に高まる期待 市場拡大へ生産・開発投資活発

先月、山梨県韮崎市に完成した東京エレクトロンの開発棟

米エヌビディアが今月発表した新しい生成AI用チップ米エヌビディアが今月発表した新しい生成AI用チップ

 半導体製造装置各社は、スマートフォンやPCなど民生機器の需要減少などに伴う半導体市況の悪化を受けて半導体メーカーが設備投資に慎重となっていることから収益が前年度を下回る調整局面にある。

 ただ、早ければ今年下期からAI(人工知能)の活用増加を背景にデータセンター向けサーバーへの投資拡大や民生品の需要回復が見込まれる。メモリー価格の下落幅も緩和されつつあり、世界的なEV(電動自動車)化や脱炭素化の流れからパワー半導体の需要は底堅い。IoTなど産業向けも好調だ。

 新たな成長のけん引役として期待が高まっているのがチャットGPTに代表される生成AIだ。

 AIサーバー向け需要として、帯域幅が高くエネルギー消費が少ないHBM(広帯域幅メモリー)については既に、「貼り合わせ装置への引き合いが強く入っている」(東京エレクトロン・河合利樹社長)。東京精密もHBMについて、グラインダーに加え、「メモリー積層によるプロービングの需要が増加」(高嶋直樹経営支援室IRチームリーダ)することで今後の受注を見込む。

 SCREENHDの廣江敏朗社長は「メモリー向けの売り上げ比率は他社より少ない」としながら、「生成AIでメモリー需要が増えれば全般に波及するのでその影響は当社も少なからず享受できる」と市場全体で広範な事業機会が創出される可能性を示唆した。

 このほか、キヤノンは生成AI用GPU生産に適用可能な後工程向け露光装置の受注が増加。アドバンテストは来年以降、生成AIに関連した高性能半導体のテスト需要増へ期待を示す。

 中長期的な市場拡大を見据え、開発拠点の新設や工場増設といった各社の設備投資の動きが活発だ。

 東京エレクトロンは今年度、研究開発費に過去最高水準の2000億円を計上。7月に成膜やエッチング、パターニング技術などを開発する施設が山梨県韮崎市に完成した。

 キヤノンは露光装置の需要増加に対応して栃木県宇都宮市の工場隣接地に新棟建設を計画し、今年下期に着工。荏原製作所も来年、熊本事業所(熊本県南関町)に新設するウエハー研磨装置(CMP)の生産棟が完成予定だ。

 芝浦メカトロニクスも横浜事業所(横浜市栄区)に半導体前工程向け製造装置の先端研究開発用クリーンルームを備えた研究開発棟を来年夏に着工するなど、各社は今後の需要拡大に対応した投資を強めている。

 (16日の電波新聞/電波デジタルで詳報します)