2023.08.30 【エンターテインメント総合特集】レコード会社トップが語る わが社の戦略 日本クラウン・片岡恵介社長

片岡恵介社長

「第7世代」の活動活発
演歌歌謡曲で存在感発揮

 コロナ禍は、新譜を発売してもキャンペーンやイベントができず、楽曲を披露する場も少なくなり売り上げは厳しかった。現在は、生活も戻りつつあることと、デジタルの活用など接し方や楽しみ方が分かってきたことから、好転している。

 当社の強みは、演歌歌謡曲。年間2組の新人をデビューさせてきた。実力が伴わなければ淘汰(とうた)されてしまうこの世界、アーティストのマネジメントを行う「クラウンミュージック」からヒット歌手を誕生させたい。

 スーパースターが一人いることで、周りの環境が変わる。誰もが知る氷川きよしのような歌手が必要だ。そのためにも、新人発掘と楽曲を披露する機会・場所が大切になる。

 パッケージ販売は、店頭販売をはじめ、イベントでの即売、ECサイトが主。お客さまに対面で歌を届けて一枚ずつ積み重ねていく手法は、今後も続くが、コロナ禍でレコード販売店も厳しい状況になった。デジタル配信やサブスクも市場を拡大しているが、演歌歌謡曲はまだパッケージが強い。当社としては、メーカーが直接販売するECサイトの運営が大切な役割を果たす。

 どうCDを売るのか。演歌歌謡曲は一曲を大切に歌い丁寧にプロモーションする。そのため、カップリング曲やジャケットを変えたCDを制作するケースが多い。

 楽曲を大切にしながら、新しくCDを手に取ってもらう機会を作る。ファンにはコレクションとして楽しんでいただく。シングルはアルバムと比べて単価が安く、手に取ってもらいやすい。今後もこの形式は続くだろう。

 売り上げ枚数が全てではないが、認知や支持の表れであり、テレビ番組などの出演のきっかけにもなる。CD購入者用のオリジナル特典も取り入れながら、ファンだけでなく店舗の販売に対するモチベーションも向上させたい。

 コロナ禍で活用方法が変わったSNSにも注力していく。SNSを中心に、1980年代~90年代の楽曲にも注目が集まっている。演歌歌謡曲にとって、大きなチャンスの場でもある。バズらせる目的ではないが、聴いてもらうきっかけにしていきたい。

 デビュー5年以内の「第7世代」が活発に活動している。強みとしている演歌歌謡曲をこれからも大切にして、「日本クラウンあり」と存在感を発揮したい。

 業界を発展させるには、当社だけでは限界がある、他社含め一緒に盛り上げて、スーパースターを誕生させたい。エンタメは文化。楽しみ方が変化しても衰退することはない。