2020.03.12 最新トレンド・レクチャー第1回「5G」
5G(第5世代移動通信システム)
盛り上がりを見せているが、「分かりやすく5Gを説明してよ?」と人に聞かれて答えられない電波新聞の新人記者つぐみ。5Gとは、どんな通信システムなのか。今日は、先輩記者カゲと一緒にドクターDのもとに取材に来た。
おはようございます!
早速ですが「ゴージー」って盛り上がっているようですが、よく分かりません。ご説明いただけないでしょうか?
お前はそんなことも知らなかったのか。ゴージーは携帯電話が速くなるんだよ。
おいおい「ファイブジー」といった方がよいぞ。
5Gはそれだけではなくて、3つの大きな特徴があるんだ。
3つもですか?
うむ。
まず1つ目は、カゲくんが言ったように「超高速」じゃ。
ざっくり言って、速度が現在の移動通信システム(4G)より100倍も速くなる。
100倍!
カゲ先輩、知らなかったんですね。ふふふ。
ドクター、あとの2つを教えてください。
うむ。
2つ目は「超低遅延」じゃ。これはな、現在の移動通信システムではどうしても起きてしまう通信の遅延を、極限までなくそうということじゃ。
そして3つ目は「多数同時接続(多端末同時接続)」ということじゃ。今後はIoTといってな。スマートフォンやPCだけではなく、身の回りのものすべてがネットにつながるのじゃ。
そうすると、一家で100台ネットにつながるものがあるかもしれん。そんなものを多数接続して動かすには、今の4Gでは賄いきれないんじゃ。
あら、今は4Gっていうんですか?
そもそもどういう意味なんですか「G」って?
つぐみは、電波新聞に入社してそんなことも知らなかったのか。
「G」はGeneration(ジェネレーション)の「G」じゃ。
つまり、移動通信システムの「世代」ということだ。
最初の「1G」は携帯電話が普及しだした1980年ごろじゃな。この時はまだアナログ通信システムじゃった。
うれしかったのう。わしもまだ若くて女子大生だった妻にどこからでも電話を……。
ドクター、それはいらない情報です。
むむ。
次の「2G」は1990年ごろから普及し始めたデジタル通信システムじゃ。そして2000年ごろになって「3G」。
第3世代になった移動通信システムは、世界共通のデジタル方式となる。
このあたりでは、インターネットにつなぐことがごく普通になったんじゃな。「写メ」とかを妻と送り合ったり……。んん。分かった、分かった。
そして2010年ぐらいから出てきたのが「4G」。まさに今普及している「動画」も普通に見られるようになった移動通信システムじゃ。
正確には3Gの時代の中でも少しずつ進化して、3Gの途中にLTEが生まれてかなり速くなって、普通に動画を見られるようになる。
4G時代になってLTEのもっと速いバージョン、LTE-Advancedとなり、精細な動画も見られるようになったというわけだ。
それじゃ、1Gと4Gとは天と地ほどもスピードが違うんですね?
約30年間で10万倍速くなったといわれておるぞ。
ひえー。
もうそんなに速くなったんだから、もういいんじゃないでしょうか?
いやいや。
5Gが必要な訳は、別にスマホを速くしたいからだけじゃない。これから、科学の力でわれわれの生活を支えてもらう必要があるのじゃ。
特にわが国のような少子高齢化社会においては、働き手が少なくなるぞ。
きつい労働現場でロボットの力を借りたり、自動運転車で人や荷物を運んでもらったりしなくてはならない。
また、顔認証技術で町の安全を見守ってもらわなくてはならない。
医療では、遠く離れた場所の手術を違う場所にいる専門医が遠隔支援することも必要になるじゃろう。
自動運転の場合、街中に膨大な数のセンサーがあって、クルマとやり取りするわけですからね。
もし通信に遅延があったりしたらアウトだし。多数同時接続ができないと使い物にならないですね!
そうじゃ。
遠隔手術の支援もそうじゃな。高速回線で高精細な画像が見られないと、人体の細かいところまで分からないし、通信に遅延があったら大変じゃ。
そうすると街中にセンサーがあるわけですね。まちづくり自体も考えないとダメなんですね。
おお。初めて記者らしいことを言ったな(笑)。
5G時代にはトリリオンセンサー(1兆個のセンサー)が世界にあふれるという説もある。
いや、もっとかもしれん。これらにどうやって電源を供給するかということも課題になるじゃろうな。
課題もあるのですね。
それじゃ、もうすぐ社会全体が5Gで大きく変わるんですね。
……。
あれ?
ドクター、生きてますか?
ばかもん。生きとるわ。
実は、3Gから4Gへの移行というのは、技術的に近くて比較的スムーズにいったのじゃ。
ところが5Gはまったく違う技術になる。
なので、最初は「5Gを必要とする施設や地域」に5G網をつくっていき、社会全体にゆきわたらせるまでは、4Gと併用していくというのが現実的といわれておる。
ええー。
じゃあ、あんまり速くならないんですか?
つまんない~。
いや。
大手通信会社は現在のLTE-Advancedをさらに進化させて、enhanced LTEという規格を展開していこうとしている。
つまり「やたら速い4G」と新しい5Gの技術を併用していくんじゃな。
なので、使っているエンドユーザーは「何だか速くなったな」と思うような時代がすぐ来ると思うぞ。
楽しみです!
そして、Generationの説明をした時に、だいたい10年ごとで大きな変革があったのに気がついたかな?
きっと2030年頃には「6G」も登場するじゃろう。
その頃また聞きに来ます!
ちがうな!(バキッ)
×●△☆※…
ITの世界は日進月歩なんだから! 来月また来ます。ドクターD!
うむ。待っているぞ。
イラスト ⓒくり ひろし