2020.06.09 最新トレンド・レクチャー第4回「テレワーク」
テレワーク
先輩!
早速ですが「テレワーク」って何ですか?
説明するまでもないだろ。今やってるこれだよ。
テレビ会議で働くからテレワーク…。
…じゃないかな?
なんか怪しいなぁ~。
そうだ、ドクターDを呼び出して聞こうっと。
(リモートでドクターを呼び出す)
ドクターD、よろしいですか?
やれやれ、外出自粛で君らが押しかけてこないと思ってホッとしていたらこれか。なんじゃね?
「テレワーク」とは何ですか?
うむ。
「テレ」が「遠く離れて」、
「ワーク」が「働く」の意味じゃ。
政府の資料では「ICT(情報通信技術)を活用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」と、示されておるな。
俺の言った通りじゃん。「柔軟な働き方」のことなんだよ。
先輩の場合は「軟弱な働き方」です!
テレワークは、取り入れた企業にも、従業員にもメリットがあるぞ。
まず企業側のメリット。働き方が柔軟になるので、人材の確保や離職の防止に役立つ。また、非常時の事業継続(BCP)に役立つ。まさに今のような感染症のまん延の時じゃな。
一方、従業員側にも、通勤ラッシュから解放されて仕事ができる、時間が有効に使えるからワークライフバランスが向上するなどのメリットがあるのじゃ。
在宅勤務って楽ですもんね(笑)。
ただし、「テレワーク」と「在宅勤務」は、正確に言うと同じではないんじゃ。
テレワークには「在宅勤務」「サテライトオフィス勤務」「モバイルワーク」の3種類がある。在宅勤務はテレワークの一つなんじゃ。
「在宅勤務」は、今、我々がやっているやつですよね?
そうじゃ。1日の仕事のほとんどを自宅で行う働き方じゃな。そのほかも説明しようかの。
「サテライトオフィス勤務」は、会社以外の場所、例えば会社が用意した近隣のコワーキングスペースなどで仕事をする働き方じゃ。
「モバイルワーク」は、自宅から顧客に直接訪問などして、その移動の合間にコワーキングスペースやカフェなどで、取引先や自分の会社とやり取りする働き方じゃ。これは営業職などが多いかな。
ただ、現在のような感染症対策としてのテレワークは在宅勤務とほぼイコールといえるじゃろう。
テレワークは、どんどん取り入れるべきですよね。
うむ。しかし、企業側としては、気を付けなくていけないこともあるぞ。
まず情報漏えいなどを防ぐための「セキュリティ対策」じゃな。
例えば、シンクライアントPC(ハードディスクなど記憶装置を持たず、クラウドにデータを預けて作業するパソコン)や、安全に通信するためのVPN(仮想専用網)の回線などの「通信環境」の整備が必要になる。
確かに。セキュリティの怪しい公衆Wi-Fiとか使っちゃダメですよね。
安全なテレワークのシステムや環境を作るためには、一定の知識も要るし費用もかかる。
だから、中小企業では、導入に二の足を踏んでいるところも少なくない。
まあ、そうした企業は、テレワークを導入するために行政の補助金などを利用するという手もある。
ほかには、どんな心配点がありますか?
それはもう、君たちのような社員の「労務管理」と「人事評価」をどう行うかということじゃな。
ギクッ!
ギクッ!
企業としては、テレワークを導入して業務効率が落ちては話にならんのじゃ。
そうならないためには、テレワークを取り入れる前に、会社の業務フロー(手順)をきちんと精査し直すところから始めるべきじゃろう。
そして、その業務フローの中で、「テレワークでできるもの」「テレワークでできないもの」を整理して、業務に従事する従業員の評価を決めねばならん。
つまり、テレワークの導入を「自社の業務や仕組みを見直す機会にする」というぐらいの気持ちが必要じゃろうな。
実際、仕組みを導入するには、どんな方法があるのですか?
まずは「リモートデスクトップ方式」じゃ。
これは自宅のPCで会社のPCを遠隔操作するやり方じゃ。自宅のPCにはデータは残らないので情報漏えいは起きにくい。ただし、会社のPCは常に電源をオンにしておく必要がある。
次は「仮想デスクトップ方式」。
これは、会社のサーバー内にある仮想デスクトップに遠隔でアクセスして作業する方法じゃ。これも自宅パソコンにデータは残らないぞ。
さらに「クラウド型アプリ方式」。
これは、クラウドにあるアプリにWeb経由でアクセスして作業を行う。ただし、PCにある程度の性能の高さが求められる。
最後は「会社PCの持ち帰り方式」じゃ。
これは一番やりやすそうだが、セキュリティ的にはもっとも危険じゃろう。安全性を確保するには、PCにあるデータなどを暗号化するなどの対策が必須じゃ。
さっき出た「労務管理」ですが、テレワークの場合、出勤簿とかの管理はどうするんでしょうか?
それもそうだけど、私はみんなと会えないと何だかパワーが出ないな…。
テレワークでの勤怠管理、給与計算は煩雑じゃ。PCのログインとログオフで勤務時間を計算できるようなツールが必要かもしれん。
また、「テレワークでは雑談がなくてさみしい」という声をよく聞く。従業員のためにWeb上、またはリアルな交流場所を作ることが必要かもしれんの。
社員からすると、テレワークで通勤は楽になりますが、結構シビアに仕事で結果を出すことが求められそうな気がします。
うむ、よいところに気が付いたな。
テレワークでは、業務上のいろいろなことが透明になって、今後は「この社員はどんな価値を会社に提供したか?」という点を厳しく見られることになるじゃろう。
だから、テレワークになったからといって、楽になるということでは、決してないんじゃぞ。
カゲ先輩のように、テレビ会議で打ち合わせ中に、ひと言もしゃべらない人は「無価値」ですね。
先輩に対して、ひどいこと言うな、お前は!
ドクターD、ありがとうございました。
これからは、私の時代だ!
……。
カゲくん、つぐみくん、テレワークだからといって気を抜かず、がんばって働くんじゃぞ。
イラスト ⓒくり ひろし