2023.10.13 【育成のとびら】〈12〉 人事が考える管理職の課題 トップは「部下育成力」 8割超で断トツ
10月1日は学生採用活動の「内定解禁日」。既に来年度の新入社員の内定式を行った企業もあれば、採用活動はまだ道半ばという企業もあるだろう。どちらにしても、新入社員を受け入れる企業は4月に向けて準備が忙しくなっていく。
近年、人材獲得競争はますます熾烈になっているが、組織として長期的な競争力を高めるためには、新入社員や若手社員の成長と定着が重要課題であることは間違いない。そして社員の年次にかかわらず、獲得した人材を定着・成長させるためのカギは、管理職側の育成とマネジメントスキルにある。
スキルが必須に
当社ラーニングエージェンシーとラーニングイノベーション総合研究所が2022年に企業の人事責任者・担当者277人に対して実施したアンケート調査で、管理職の部下育成に関する課題が浮き彫りになった。多くの人事が「管理職・リーダー層」の育成に課題を感じ、中でも管理職の「部下育成・マネジメント」スキルを高める必要性を感じていることが明らかになった。
調査で「特に注力して取り組みたい育成対象」について聞いたところ、規模を問わず約6割の企業が「既任管理職」「リーダー」「新任管理職」を挙げた(図1)。
さらに「自社の管理職について、知識・スキルや業務の姿勢で課題に感じること」については「部下育成力」が8割超と圧倒的に多い結果となった(図2)。
これらの結果から多くの人事が、管理職について部下育成力が課題と捉え、改善の必要性を強く感じていることが読み取れる。
しかし、管理職の立場からみれば、部下の育成業務の重要性は認識しつつも、目前のタスクや成果目標に追われがちという方も多いだろう。その背景には、会社が期待している自身への役割を管理職自身が十分に認識できていないという課題が隠れていることが多い。
今回は「会社の求めている役割をきちんと把握できているだろうか」と不安になった管理職にぜひ試してほしい取り組みを二つ紹介する。
一つ目は「会社が定めている人材要件を見直す」こと。
単純で基礎的なことだが、意外と確認していない人が多い。まずは、基本に立ち返ってみてほしい。
二つ目は「特に重要だと思う自分の役割を三つ書き出して、上司に確認する」こと。
多くの管理職は「専門性を発揮して売り上げをけん引する」といった成果に関わる目標などを挙げるが、上司からは「それよりも部門のマネジメントを」「体調不良者が出てきているから、もっと労務管理に力を入れてほしい」など、思わぬ要望を伝えられることがある。
認識のズレ可視化
ポイントは具体的に自分の考え方を書き出してから聞きに行く点だ。具体を書き出さないまま「管理職として自分の役割は何でしょうか」と聞くと、上司も抽象的な言葉に終始しがちで、認識のズレを可視化できない。
どちらも手間も時間もそれほどかからない。自身に求められている役割を見直したい、あるいは会社から高い評価を得たいという管理職は、ぜひ試してみてほしい。(つづく)
〈執筆構成=ラーニングエージェンシー〉
【次回は10月第4週に掲載予定】