2023.11.15 【Inter BEE特集】車載インフォテインメントシステムが大きな変革期 カーラジオの価値を最大化へ 夢のあるモビリティー体験を実現
未来のラジオをJAPAN MOBILITY SHOWで訴求
地域に根差した情報などで多くの人々に寄り添ってきたカーラジオ。IoTの発達によって今後、車載情報端末を搭載するコネクテッドカーのさらなる普及が見込まれる。
車載インフォテインメントシステム(情報と娯楽の両方の提供を実現する車載システム)は技術的に大きな変革期を迎えている。スマートフォンの普及とともに、AI(人工知能)とクラウドサービスの導入により、技術的進歩を促進する。
モルドールインテリジェンスのリポートによると、次世代の車載インフォテインメントシステムの市場規模は、2023年に253億ドルと推定される。23~28年のCAGR(年平均成長率)は6.10%で伸長し、28年に341億ドルに達すると予測されている。
日本民間放送連盟(民放連)は重点施策として、民放放送の価値を最大限に高め、社会に伝える施策の一つに「テクノロジーの進歩への対応」を掲げている。ラジオ委員会では、フルIP化を見据えたカーラジオの次世代戦略を推進しており、カーラジオのUXと利便性向上を図り、夢のあるモビリティー体験を実現して、ラジオの価値を最大化する考えだ。
◆「未来のラジオ」体験提供
民放ラジオ全99局とradiko(ラジコ)がタッグを組み、先頃開かれた「JAPAN MOBILITY SHOW2023」に共同で出展し、進化した「未来のラジオ」の体験を提供した。
今回の未来のラジオは自動運転を想定したシステムで、28年の放送システムのフルIP化に合わせて、自動車関係メーカーと共創関係を作って実現を目指す方針。
民放連の三村孝成ラジオ委員長(TBSラジオ会長)は「コネクテッドカーが普及しても、カーラジオの聴取習慣を維持し、非常災害時にはドライバーの命を守る確かな情報を届ける。ドライバーに安全で豊かな時間を提供することは、自動車業界とラジオ業界が共有する『大切な思い』だと考えている」と話している。
同ショーへの出展を機に、ラジオが今後もモビリティーにとってかけがえのないパートナーであることを積極的に発信していく。
民放ラジオブースでは未来のラジオを訴求する。自動車のダッシュボードにIPラジオが搭載されることで、ラジオ番組やCMのメタデータと自動車の位置情報を連動し、便利で魅力的な未来のラジオを実現する。楽曲のオンエアと同時に、曲名やアーティスト名だけでなく、アーティストに関連したニュースや最新のライブ情報なども表示できるようになる。ドライバーは知りたい情報をすぐに手に入れられる。
CMは位置情報に連動し、その時に走っている近くのお店のCMに差し替えられる。それと同時に、お得なクーポンを手元のスマホへ届けることもできるようになる。
車に乗る人の利便性を高めるだけでなく、ラジオ広告の可能性を広げ、広告主のマーケティングに役立つ新たなコミュニケーションを実現する。
地震が起こった時には位置情報に連動し、海沿いを走る車には津波情報を、山沿いを走る車にはがけ崩れの情報を表示する。いざという時に、ドライバー一人一人の状況に応じて、緊急時に必要な安全確保のための情報を伝える。
民放連ラジオ委員会の中岡壮生協調領域対策部会長(J-WAVE社長)は「すぐに実用化できるサービスではないが、カーラジオの可能性を感じ取ってもらいたい」と話す。
◆radikoの取り組み
いつでも、どこでも、無料でラジオを聴くことができるスマホアプリ「radiko(ラジコ)」は、10年に誕生した。日本における唯一無二のラジオプラットフォームとして、スマホやパソコンなどでラジオが聴ける無料のサービスだ。
開始当初は東京局、大阪局など13局でスタートしたが、今では民放ラジオ全99局、NHK、放送大学も参加している。
過去1週間以内に放送された番組を聴ける「タイムフリー」機能や、エリアを越えて全国のラジオ番組を楽しめるradikoプレミアム会員限定サービス「エリアフリー」機能などを通じて、時間や場所を選ぶことなく、ライフスタイルに合わせてさまざまなシーンで手軽にラジオを楽しめる。1カ月で平均約850万人、1日では約190万人が利用している。
今後の普及が見込まれるコネクテッドカーのダッシュボードに、ラジオのアプリケーションが搭載されれば、これまで以上に、より手間なく簡単に気軽にラジオを聴けるようになる。
radikoの青木貴博社長は「音声のコンテンツのみならず、その音声にまつわる付加情報を添えることで、これまでよりも快適で豊かな情報を届けることができる。radikoにはラジオ業界の協調領域を担うという役割がある。ラジオの価値の最大化を目指す」と強調した。
民放連とradikoは、これからも日本自動車工業会と対話を重ねながら、ワクワクする夢のあるモビリティー体験の実現に挑戦していく。