新型コロナが感染症法上の5類に移行されて以来、暮らしや人々の行動様式が変容したが、依然として、清潔・健康意識は強く、空気質への関心も高い。空気清浄機をはじめ、除菌・脱臭機や加湿器、換気機能やイオン・ミスト発生機能などを搭載したエアコンなど、空質向上に貢献する多彩な商品がラインアップされており、空質ニーズを顕在化させる取り組みが重要となっている。

　空質商品関連で主力となる空気清浄機は、パワフルな集じん性能やイオン発生機能、UVやオゾン除菌、除湿・加湿機能搭載といった清潔・快適につながる付加価値の高い商品戦略が活発だ。

　市場の動きについては、新型コロナ禍が始まった2020年度の過去最高出荷台数（前年比177％の約360万台）をピークに、21～22年度は連続して前年割れの状況となっており、反動が長引いている状況だ。

　新型コロナ禍で出荷がピークを迎えた20年度以前は、年間でほぼ200万台前後の推移となっていた。現状を見る限り本来の需要規模に戻った感が強いが、23年度に入って以降も、依然として前年割れが続いている。

　一方、過去には20年度と同様に需要が一つのピークを迎えた時期があった。花粉飛散が激しく、PM2.5問題がクローズアップされた12年度で、当時も300万台弱の需要があった。

　その前後の年も250万台以上の需要があり、比較的高水準に推移したことから、このころの買い替え需要も潜在的には見込める状況だ。こうした中、空質関連の主力商品である空気清浄機については、需要創造に向けた新たな提案が求められるようになっている。

　空気質に対するニーズは幅広く、花粉対策や、脱臭（生活臭）、除菌、PM2.5対策、ダニ・カビ・化学物質などアレルゲン対策など、さまざまなニーズがある。これらに対して本格的な性能を持つ商品の提案が効果的だ。

　またB2C向けにとどまらず、介護施設やクリニック、学校・保育園などの教育関連施設、飲食店といったB2Bチャンネルでの需要掘り起こしも大きなテーマとなっている。

　現状落ち着きを見せる需要に対して、空気清浄機メーカー各社は、より本格的な性能を持たせた新商品の開発に力を入れており、空気質に対する市場ニーズに応えている。

　■本格性能への関心は高い

　空気清浄機について近年、ユーザーが関心を持つのは、本格的な空気清浄性能だ。ダイキン工業の調査によると、空気清浄機を購入する時の重視点として挙がるトップ3は、ほこり・花粉などの集じん性能（51％）、臭いを除去する性能（32％）、菌・ウイルスを除去する性能（31％）となる（22年10月同社Web調査／n＝1053）。

　空気質の向上に関わる花粉除去、脱臭、除菌性能への意識は根強いものがあり、空気清浄機の需要顕在化に向けてのヒントになる。

　また、同社の調べでは夏や冬に、ルームエアコンと同時使用する家電を聞くと、扇風機・サーキュレーター（70％）に次いで、空気清浄機（43％）が多かった（23年7月Web調査／n＝16150）。室内の快適性を高める併用家電として、空気清浄機が注目されていることも分かる。

　特に冬場は、エアコン暖房による乾燥を気にする人が多く、加湿機能搭載空気清浄機の提案も重要となる。

　年明けには花粉シーズンを迎えるが、一年中で特に空気を気にする季節は2月という（同社調べ）。空気清浄機の購入動機のトップに挙がるのも花粉対策であり、花粉シーズン前は商機となる。

　パナソニックの調査では、花粉ケアを目的としてこれまで購入したものは「マスク」に次いで「空気清浄機」（33.1％）が上位に挙がる（22年12月／花粉について悩みを抱える人4700人）。空気清浄機の提案は、年末商戦が一つの好機となりそうだ。

パナソニックの主力商品

家庭用「ジアイーノ」F－MV5400、1台4役で清潔空間

　パナソニックは、空気質への関心が強まる中、高い除菌・脱臭機能を持つ次亜塩素酸　空間除菌脱臭機「ジアイーノ」の提案に力を入れる。

　家庭用ジアイーノ主力商品F－MV5400は、「集中クリーンモード」を搭載し、一台4役で部屋の空気の悩みを解決する。

　新型コロナ禍以降、日常生活で除菌に気を配ることが定着した。また、在宅時間の増加に伴い、汗や体臭、生活臭が気になる人が増えている。ペットの室内飼いも一般的になり、ペットの排せつ物の臭いに困る人も増えている。

　F－MV5400は集中クリーンモードを搭載し、一時的に次亜塩素酸濃度を高めることで、部屋に付着した菌や臭いを通常運転時より集中的に除菌・脱臭する。

　脱臭については、空間に漂い続ける臭いの除去（空間臭脱臭）、布製品に臭いが染みつく前に素早く脱臭（付着前脱臭）に加え、焼き肉など既に布製品に付着している臭いの脱臭効果（付着集脱臭）も確認し、トリプル脱臭を実現する。空間臭脱臭では、実際のネコ・イヌの排せつ物の脱臭効果があることも実証した。

　また、ジアイーノは、人が多く集うリビング空間で一番使われており、一台で除菌・脱臭・加湿だけでなく、花粉やハウスダストも取りたいという要望があった。

　検証の結果、保護エレメント（HEPAフィルター）で花粉・ハウスダストを集じんできることが分かったほか、次亜塩素酸水溶液がトレー内の水の菌を抑制、清潔に加湿できることも実証した。

　さらに、標準運転時の風量を増やすことで、従来機種（F－MV4300）と本体サイズはそのままで適用床面積約21畳にまで対応し、広いリビング空間などに向いている。

　冬など乾燥した時期には加湿「多め」を選べば加湿量650ミリリットル／時でしっかり加湿する。

　また、ジアイーノ購入者の半数がペットと暮らすペットオーナーであることを受け、ジアイーノ　ペットエディションF－MV4420も新たに加えた。スピード脱臭モードや音に敏感なペットに配慮し、運転音が徐々に上がる「シームレス風量切り替え運転」を搭載する。