2023.12.13 【セミコンジャパン特集】半導体市場、24年に回復へ 生成AI関連の伸長見込む

24年の半導体市場回復が見込まれている(写真は9月のセミコン台湾)

 2024年からの半導体市場の回復に向けた兆しが見え始めている。米半導体工業会(SIA)が今月発表した10月の世界の半導体売上高は466億ドルで前年同月比ほぼ横ばい。前月比では3.9%増で、前月比としては8カ月連続で増加した。

 先月末にまとめられた世界半導体市場統計(WSTS)の秋季予測では、24年の半導体市場は前年比13.1%増の5883億ドル。過去最高だった22年を2年ぶりに更新する見通しだ。スマートフォンやパソコン、民生品向け需要が回復し、特に生成AI(人工知能)関連需要の伸長が見込まれている。

 生産開発拠点への大規模投資計画も多く、国際半導体製造装置材料協会(SEMI)の予測では世界の半導体製造産業は23年第4四半期から回復に向かう見通しだ。

 AI向け半導体はチャットGPTに代表される生成AIの急速な普及で今後高い成長が見込まれる。生成AIは大量のデータ処理が必要で、高性能演算処理が可能なロジック半導体が求められる。

 米エヌビディアの高性能GPUが生成AI向け半導体市場を席巻する中、米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は先日、生成AIの処理能力を高めるアクセラレーターの新製品を発表した。米インテルなどの半導体各社や大手テックも生成AI市場の拡大を見据え、製品開発を加速している。

 AI処理に必要な大量のデータ処理を短時間で実行するため、プロセッサーとの間で高速にデータ転送を行うHBM(高帯域幅メモリー)など高性能メモリーの重要性が高まっている。生成AI対応GPUには複数個のHBMが実装。HBM3EからHBM4Eへの進展でメモリーバンド幅は2倍になった一方、ビット当たりの消費電力は数十%以上低減するなど、AIの進化と省エネ化を同時に実現できると期待されている。

 引き続き堅調なパワー半導体は競争力向上に向けた動きが相次ぐ。ロームと東芝デバイス&ストレージはこのほど、パワー半導体の共同生産の方針を発表。ロームがSiCパワー半導体、東芝デバイス&ストレージがシリコンパワー半導体への投資を重点的に行い、製造に関する連携を進める。SiCウエハー世界最大手の米ウルフスピードも基地局など通信用のRF(高周波)半導体事業を売却し、パワーデバイス事業の開発と生産に注力する計画を発表している。

 ウエハー上に回路を形成する前工程と、チップをパッケージして製品に仕上げる後工程の融合は引き続き進展。前回のセミコンジャパンでは後工程に特化した専門展示会「APCS」が初めて開催された。異なる半導体を組み合わせて一つのチップのようにする「チップレット」や、シリコンインターポーザーの上にICチップを並列配置する「2.5D実装」、TSV(シリコン貫通電極)を用いてチップを積層する「3D実装」など半導体パッケージング技術の革新によって高集積化、高性能化を目指す取り組みが続く。