2024.01.05 【新春インタビュー】イノベーターワン 久保島力社長

創意工夫でより良い未来つくる

 ―イノベーターワンを2021年に新たに設立しましたが、設立の背景について教えていただけますか。

 久保島 私は30年以上、電機メーカーや部品メーカーで生産管理や品質管理・購買など現場の経験を積んできました。直近はパネル最大手の中国BOEテクノロジーグループの上席副社長(SVP)、海外営業本部長として戦略立案などに関わり、2011年に日本法人BOEジャパンを設立し責任者を務めてきました。

 BOEジャパンでは10年にわたってパネルメーカーとして日本の電機メーカーへの製品の販売に関わるだけでなく、自らコンテンツサービスなどさまざまなITを駆使したサービス開発に取り組みました。

 多くの経験をしてきましたが、BOEはパネルメーカーでもあるため、テレビメーカーなど企業間での取引が大半でした。私自身はこれまでの経験を生かしながら自ら製品を企画し、自分の思いを、自らの製品を通じて直接エンドユーザーに届けたいと思い、新たなチャレンジをすることにしました。また、私が経験してきたことを、次世代を担う若者にも伝承していきたいとも考えています。

 ―イノベーターワンの会社概要について教えてください。

 久保島 まずは社名ですが、独自にさまざまなことを研究し、革新していく「イノベーター」の一番でありたいという思いから「イノベーターワン」としました。商品の総合ブランドは「Miramage(ミラメージュ)」にしています。日本語の「未来」と英語の「miracle(奇跡)」「image(イメージ)」を組み合わせた造語で、「未来にミラクルなイメージをつくりだす。」という意味を持ち、創意工夫で世界を変え、未来をよりよいものにする最高レベルのトータルソリューションを提案していきたいと考えています。

 事業領域は、広告配信関連、AVやIoT機器の開発・生産・販売・サービス、表示デバイスを活用したトータルソリューションの三つになります。当社は商品企画・システム設計・デザインなどは100%日本で実施し、独自に開発したAV機器やIoT機器の生産はパートナー企業とともに進めています。テレビなど表示機器の組み立て生産はBOEテクノロジーグループなどに委託しています。特にミニLEDディスプレー製品についてはBOEと日本独占販売の総代理店契約を結んでいます。

 ―広告配信の事業はどのように進めているのでしょうか。

一社で一貫してできる

 久保島 当社の特徴はクラウド型のコンテンツ管理システム(CMS)に加え、通信機能と顔認識などの機能が一体となったセットトップボックス、顔追跡AI(人工知能)カメラを全て独自開発していることです。サーバーも自社で独自開発構築・運用していますので、当社の仕組みを使えば一社でデジタルサイネージの機器の調達から配信運営の利用まで一貫してできてしまいます。

 一般的なデジタルサイネージの場合は、3~5社の製品やサービスを組み合わせて行いますので、手間も時間もかかります。当社のサービスを利用すれば、より低コストで素早く柔軟に広告配信ができるようになります。

 配信サービスも特徴があり、AIカメラにより広告の前を通行した人の数だけでなく、どのような人がどのコンテンツを見たのか、日時や年齢や性別まで含めて全部把握できます。リアルタイムに視聴状況を監視できるだけでなくレポートの作成もしますので、より最適な人に最適なコンテンツを配信できるようになります。CMの空いている枠の検索などもできますので、広告主のさまざまな要望に応えられると考えています。

 こうしたサービスは業界では初めてのものになります。広告代理店をはじめ引き合いも多く、さまざまなパートナー企業とサービス展開をしていきたいと思っています。

新しい価値を生むテレビを開発

 ―電子黒板も展開していますね。

 久保島 教育の現場や企業の会議室などで導入が進んでいるもので、「インタラクティブ・ホワイトボード」などとも呼ばれていますが、当社の製品は今までのホワイトボードの常識を超え、双方向通信を活用したスマート機能を強化していることから「インタラクティブスマートボード」として提案をしています。現在、65インチ、75インチ、86インチを用意し、同時に複数画面を表示し操作できるマルチウインドーや、パソコンやタブレットなどの画面を最大9台同時に投影し双方向操作できる機能などがあり、最大20人同時に操作できるようになっています。

 このスマートボードに、独自開発したスクリーンキャスティング機能付き無指向性スピーカーを組み合わせれば、テレビ会議を最適な環境で実現できるだけでなく簡単にパソコン画面も共有できるようになります。全て日本国内での認証も取得済みで、一般的に発売されているインタラクティブ・ホワイトボードに比べてもかなり低コストで導入できるようにしています。直接の販売だけでなく販売代理店などを広く募集して幅広く提案していきたいです。

 ―ディスプレー関連製品も豊富ですね。

メガネなしで立体映像

 久保島 まず紹介したいのが裸眼3D(3次元)デバイスです。32インチ、55インチ、65インチ、98インチの3Dディスプレーを用意しているだけでなく、2次元から3次元への映像変換クラウドシステムとアプリケーションも独自に開発しました。今まで専用メガネが必要だった3Dの映像も、メガネなしで迫力ある立体映像として楽しめます。

 さらに11インチの裸眼3Dタブレットも開発しました。グーグルのGMS認証を取得しています。アンドロイドOS上での裸眼3Dに関しては当社のみが認証を取得していますので、当社の技術が高く評価されたと考えています。

 医療や研究、教育現場、建築、デザインなど幅広く活用ができるとみていますので、ぜひ多くの企業で活用してほしいと思っています。

 ―テレビの開発販売にも取り組まれています。

カスタマイズが可能

 久保島 当社はチューナー内蔵のスマートテレビとチューナーなしのスマートテレビを開発しています。特徴なのは要望に応じてカスタマイズできることだと思います。たとえばホテルの客室のテレビは館内の案内やサービス、さまざまな情報配信をしていますし、テレビも見られます。こうしたテレビにも柔軟に対応できる特徴があります。

 あわせて、当社のテレビはグーグルのアンドロイドTVとグーグルTVの認証を取っています。グーグルからの認証取得によってテレビとして全面的に販売できるようになりました。特にカスタマイズできるテレビは、地上波や衛星放送、インターネット動画などを楽しむ従来のテレビ機能に加え、新しいコンテンツ配信など新しい価値を組み込むことができるようになります。

 実際にメディア企業とともに新しいテレビを開発し、納入した実績も出てきました。こうした取り組みは今後さらに増えていくとみています。

 ―一般消費者向けのテレビも開発していますが、今後の展開はいかがですか。

 久保島 既にOEM(相手先ブランドによる生産)で当社のテレビの50インチ、55インチ、65インチを昨年から納入した実績は出てきていますが、今年からは当社ブランド「ミラメージュ」でテレビを販売していきます。既に家電量販店との話も始めていますし、商戦期を見据えて展開していきたいと考えています。品質とコスト競争力の高い製品にしていきます。まずは2~3モデル出していきたいですね。

xRスタジオの建設支援も開始

 ―LEDビジョンやxR(クロスリアリティー)スタジオなどのソリューションにも取り組まれていますが、どのように進めているのでしょうか。

 久保島 LEDビジョンはパネルを自由に組み合わせていくことで非常に大きな画面を柔軟に構築することができます。当社は、屋外・室内さまざまなLEDサイネージの提案・構築に取り組んでおり、このディスプレーを活用したxRスタジオの提案も進め始めています。xRは、現実世界とVR(仮想現実)、AR(拡張現実)などを組み合わせて新たな体験を創出できるようにするものです。代表的なものにバーチャルスタジオがあります。もとはハリウッドからスタートしていますが、中国のメーカーやイギリスの企業が関わってきています。

 当社自身もさまざまなパートナー企業とも連携する中で、日本でのxR&バーチャルスタジオの企画・システム提案・構築など建設支援にも取り組み始めています。日本では最大規模のxR&バーチャルスタジオになる見込みで、高さ6メートルの大画面を設置してCM、ドラマ、映画撮影もできます。こうした表示デバイスを使った総合的なソリューション企画と構築提案を今後もさらに広げていきたいと考えています。

(聞き手は電波新聞社 代表取締役社長 平山勉)