2024.01.10 【電子部品総合特集】電子部品物流動向 IT活用し「物流の見える化」追求

アルプス物流が愛知県小牧市に建設する新倉庫の完成予想図

 エレクトロニクス産業のグローバル化が進む中で、電子部品企業には、顧客に対し、タイムリーに製品を供給していくための体制作りが求められている。2023年は、コロナ収束で経済活動が正常化した一方、米中摩擦激化や相次ぐ紛争による地政学リスクの高まり等もあり、サプライチェーンの重要性がより意識されることになった。24年は、日本では「物流2024年問題」への対応も重要となる。このため、電子部品メーカーや商社では、調達や生産、物流の見直しによるサプライチェーンの強靭化(きょうじんか)に取り組んでいる。同時に、電子部品物流企業は、物流品質向上やサービス拡充に努めることで、電子部品物流業務の高度化を追求する。

 電子部品メーカーが受注から納品までのトータルリードタイム(L/T)を短縮するには、試作・設計開発、部材調達、生産、物流など各要素での個別L/T短縮に加え、これらを一元的に捉えた最適な管理システムの構築が不可欠。

 最近は、IT・エレクトロニクス業界や自動車業界のグローバルユーザーのアジア生産拡大に対応するため、部品各社は中華圏やASEANでの物流体制を強化。倉庫からの直送による短納期対応に力を注いでいる。中華圏からのアウト-アウト拡大に向け、香港などの物流機能拡充も重視されている。

 加えて、近年は米中摩擦などに伴うチャイナリスクに対処するため、ASEAN域内における物流ネットワーク整備も従来以上に重視されている。国内外の自動車/車載電装機器業界の地産地消対応に対応するため、北米や欧州、インドなどでの物流体制構築にも力が注がれている。

 最近のエレクトロニクス市場では、21年以降、世界的な半導体不足が深刻化。また、20年の終盤から問題が指摘されていた世界的な物流逼迫(ひっぱく)も、21年から22年前半にかけて一段と深刻さが増し、電子部品物流においても、海上輸送費や航空輸送費が一時は極端に高騰した。

 電子部品各社はこれらの課題に対処するため、21年以降、素材メーカーとの連携による原材料調達力向上や、部品の設計変更と在庫積み増し、物流体制見直し、ディストリビューターやパートナー企業との連携など、L/T短縮に向けたさまざまな取り組みを進めた。22年後半以降は、やや物流の逼迫状況が落ち着くようになり、23年には、航空輸送費や海上輸送費も低下するなど、ようやくコロナ禍前に近い状況に戻りつつある。

 最近の電子部品市場では、物流業務における環境/サステナブル対応や安全対応、セキュリティーの向上も一段と重視されている。倉庫保管時や配達時に高度な温湿度管理や、物流改革を通じた省エネ/脱炭素化、トレーサビリティー機能の充実による誤出荷の徹底防止が追求されている。

 電子部品物流サービス企業は、こうしたニーズに対応し、国内外物流ネットワークの拡充や輸送ルートの最適化、荷物取り扱い技術の高度化、IT活用による「物流の見える化」、環境/セキュリティー対応などを強化し、サービスの高付加価値化を追求する。

 電子部品物流は、JIT(ジャスト・イン・タイム)、少量・多品種、少量・多頻度、多様な梱包形態、専用納品書対応などさまざまな特色がある。物流企業はこれらに対応した最適なサービスを強化し、VMI(ベンダー・マネジメント・インベントリー)倉庫の拡充、JIT納入、キットでのJIT納入といったサービスメニュー拡充に取り組んでいる。

 人手不足対策として、一人当たりの作業性向上のための物流工程自動化・省人化にも力が注がれ、物流サービス企業による省人化機械内製化なども進んでいる。

 また、日本では24年4月1日より、トラックドライバーの時間外労働時間の上限が年間960時間に制限される「物流2024年問題」が、さまざまな産業界のビジネスに影響を与えることが危惧されている。物流業界では、こうした課題に対処するため、業務の根本的な見直しや、IT・デジタル技術を活用した物流生産性向上、新たな輸送ルートの開発などの取り組みを進めるとともに、人材確保の強化や、働き方改革の推進など、さまざまな変革を進めている。