2024.01.10 【部品メーカートップに聞く 2024年の経営戦略】ケル 春日明社長
春日 社長
欧米の売上比率アップで世界に貢献
当社の業績は2022年度(23年3月期)は過去最高だったが、23年度は減収減益の見込み。工業機器市場の在庫調整が想定より長引いているが、自動化関連の市場は、生産現場改善やEV関連、生成AI関連での半導体製造装置需要などにより今後も拡大が期待できる。こうした分野でのビジネスを中長期で拡大していきたい。
24年度は現中期経営計画(3カ年)の最終年度。中計では商品群増強を推進し、5Gや新エネルギー市場を開拓することを重点方針に掲げている。注力市場は、従来の4市場(工業機器、画像機器、車載機器、医療機器)に「5G・通信市場」を加えた5市場とした。
通信機器市場向けは5Gや遠隔医療、自動運転などに貢献する高速伝送対応コネクターを中心に拡販を推進。新エネルギー市場向けは大容量バッテリーや蓄電システム向けの大電流・高電圧コネクターに注力している。
新製品開発では、通信機器市場向けの売上比率を中期で20%程度に引き上げるべく取り組んでいく。5G/6G向けのさらなる高速伝送への開発も進める。NTTグループのIOWN構想に向けた光通信用製品の開発も検討する。
車載では、自動車の電動化で統合ECUの制御基板が増加するため、高速・多極の車載フローティングコネクターを開発中だ。
23年度の設備投資は前年度比約5割増の約16億円を予定。事業拡大のための技術開発の成長投資や、生産ラインの増強と生産の見える化・スマート化への投資を推進する。
コネクター製造での外観検査を自動化できる外観AI検査機を開発中で、24年度第1四半期(4~6月)の稼働を予定している。段ボール自動製函機開発も検討中だ。開発業務のスピードアップのため、シミュレーションソフト拡充も進める。
製品供給力の強化として、23年11月に山梨事業所(山梨県市川三郷町)の生産スペース拡充を図った。これにより15~20%程度の生産能力増を見込んでいる。
当社は経営ビジョンに「コネクタメーカーとして、世界に貢献できる企業になる。」を掲げている。欧州と米国は共に売上比率が1桁台のため、それぞれ10%以上に引き上げていきたい。海外展示会を通じた当社ブランドの認知度向上と新規顧客発掘も目指す。