2024.01.12 【放送/機器総合特集】放送機器各社 24年の戦略 ミハル通信 中村俊一社長

中村 社長

事業継続可能な価格に挑戦、ELLシステムを訴求

 昨年4月に、古河電工グループから古河C&B(FCB)の全事業を譲り受けた。FCBは放送・通信用アンテナなどの無線機器事業を手掛けてきた。新しい体制により、当社の高周波技術、IPとRF伝送装置に、FCBの放送技術や無線技術を融合させ、事業の効率化を図りながら、新たな市場の創出に向けて取り組みを強化している。両社の顧客への提案力を向上させることになる。

 また、継続可能なバリューチェーンを強化するためには、価格転嫁が必要不可欠だと考えている。2024年は事業継続可能な価格にチャレンジしていく予定だ。

 当社はケーブルテレビ向けに、デジタル信号処理技術、IPネットワーク、高周波伝送技術を3本柱として、デジタルヘッドエンド機器、FTTH関連機器を提供。リモートによる保守運用支援を行う管理プラットフォーム「M-3(エム・トリプル)」なども提供している。

 新規事業として、極超低遅延で映像・音声を伝送できる「ELLシステム」を開発し、放送や医療、エンターテインメント、セキュリティーなど幅広い分野に提案している。8K対応のELL8Kエンコーダー/デコーダー、開発中の2K・4K対応のELL Liteで構成される。

 ELL Liteは音声インターフェースのMADIとDanteに対応し、非圧縮音声を極超低遅延で伝送できるため、映像と共に多チャンネル音声を公衆回線経由で遠隔地まで伝送できる。これまでにさまざまな実証実験を行い、低遅延・高画質での伝送実験に成功している。

 昨年10月に行われたライブイベントでは、ファンとの掛け合いなどの音声を、遅延することなくスムーズに伝送できたことで好評を得た。

 11月のInter BEEでは「リモート・ライブ・セッション」として、幕張メッセのブースと約50キロメートル離れた鎌倉本社を公衆回線でつなぎ、実演デモを行った。その際のネットワークは公衆回線(フレッツ光)を使ったシステムを構築したが、全く違和感がなく、進化したシステムを訴求できた。

 また、ケーブルテレビの回線を使えば、さらに安定した伝送が可能だ。24年度はいっそう完成度を上げて、多様なアプリケーションを提案していきたい。

 ネットワーク接続の簡略化・効率化も重要だ。同じ古河電工グループの古河ネットワークソリューションと協力して、より使いやすいIPネットワークの構築を目指している。社内ではネットワークのサポート体制として、SE部門を強化している。

 昨年もHFCからFTTH化が順調に進んだ一方で、HFC伝送路設備の保守が課題となっている。当社はお客さまに負担をかけないよう、HFCへの対応を行っている。24年度もFTTHへのマイグレーションを提案しながら、HFC機器の供給も継続する。

 放送局向けに、中継局へのSTLやTTL回線のバックアップ装置として「緊急回線バックアップ装置 IP送信機/IP受信機」や、山間地などの小規模な中継局として、独自開発の複数波一括処理方式を採用した「ミニサテライト装置」(開発中)も提案している。

 全国あまねく放送を維持させるためには、ケーブルテレビ用チャンネルプロセッサー装置でもサポートできると考えている。25年度以降といわれているミニサテライト装置のリプレースを見据えて、柔軟な対応を図っていく。