2024.01.12 【放送/機器総合特集】放送機器各社 24年の戦略 ソニーマーケティング 粂川滋代表取締役社長

粂川 社長

コンテンツ制作のDX化に力
より柔軟な環境提供

 昨年は放送業界を取り巻く環境が依然として厳しい中、より付加価値の高いコンテンツ制作やネット配信や海外市場に対し、コンテンツの2次・3次利用ができる良質なコンテンツを効率的に制作する流れが加速した一年だった。

 当社は、コンテンツ制作において①コンテンツの付加価値の向上②コンテンツの生産性向上③持続可能かつ柔軟な活動の三つの側面から、重点的にコンテンツ制作業界のDX化に取り組んできた。

 コンテンツ制作現場のDXにおいては、クラウドとオンプレミスをハイブリッドに活用することで効率的なライブ制作を実現する「Networked Live」とクラウド制作プラットフォーム「Creator’s Cloud」の2本のソリューションを柱に、AI(人工知能)や5Gの活用、IP化・ネットワーク化、クラウド化といった最新技術を取り入れながら、コンテンツ制作現場の省力化・効率化を提案してきた。

 今年もこれらのソリューションを主力で推進し、顧客に寄り添いながら、より良い柔軟な制作環境を提供し、次のワークフローへの移行を加速させていく。

 Networked Liveは人・場所・時間の限られたリソースを有効活用し、場所や規模を問わない新たなリモートプロダクションを実現する。昨年はメディアオーケストレーションプラットフォーム「VideoIPath」の拡張機能や、低遅延と高画質を両立するリモートプロダクションユニットなどを新たに展開した。

 一方で、それを支える通信インフラも重要になっている。昨年は、5Gを使ったワイヤレス映像伝送が注目される中、同ユニットを活用してキャリアと5G SAスライシング活用の概念実証(PoC)を実施したほか、いくつかのキャリアとリモートプロダクションやリソースシェアの発展を目指した連携を始めた。今年はこうした動きがさらに加速する見込みで、柔軟なワークフローの提案をさらに加速させたい。

 24年度はより多くのPoCを、多く顧客と一緒に伴走しながら、実用化に向けてどれだけ加速ができるかがチャレンジだと考えている。昨年まで全国で76システムが導入されており、今年はさらに拡大していきたい。

 良質なコンテンツ制作にはカメラは欠かせない。当社はカメラのラインアップが充実しているのが強みだ。特に、ラージフォーマットセンサーを搭載し、直感的な操作性を備えたデジタルシネマカメラ「VENICE」が国内外で映画やドラマなどの撮影で活躍しており、非常に好評を得ている。

 また、昨年9月に「VENICE2」の画質と機動力を兼ね備えたモデル「BURANO」を発表した。少人数でフレキシブルにVENICE2のクオリティーで制作できることで、お客の関心が高く、引き合いが多い。

 充実したカメラのラインアップにより、顧客のさまざまな要望に応えることができる。今後も良質なコンテンツづくりに効率的に貢献できることが、さらに加速する挑戦だと思っている。

 近年、注目されている大型LEDを備えたバーチャルプロダクションにも力を入れており、最新映像テクノロジーを融合させ、新たな映像表現の場として提案している。グループ会社のソニーPCLがCrystal LEDを使ったバーチャルプロダクションスタジオ「清澄白河BASE」を運営している。昨年5月には、さらなる機能を進化させ、大幅に拡張させている。今年もソニーPCLの運営ノウハウと併せて、顧客へトータルでの制作環境を提案していく。

 映像コンテンツ制作の入り口のカメラから出口のテレビまでの製品を提案できるのはソニーの強みであり、映画をはじめとする撮影技術で培ったノウハウをテレビやオーディオの新たな商品につなげていく。ハード面での貢献に加え、さまざまなコンテンツ制作活動を支援することでクリエーターに支持されることを目指す。ソニーの強みを生かしながら、制作現場にトータルで貢献できることを目指し、今後も引き続き取り組みを強化していきたい。