2024.01.15 【電子材料特集】各社の事業展開 大陽日酸

相田常務執行役員(右)と千葉事業部長

高品質特殊ガスを安定供給
半導体市場立ち上がりに対応

 日本酸素ホールディングスグループの大陽日酸は、半導体製造工程などで不可欠な特殊ガスを供給する大手メーカー。多様なニーズに対応した特殊ガスをそろえ、国内4カ所の生産拠点で高品質な製品を安定供給する。最先端の顧客向けでは、R&D部門との連携により新しい材料の開発・提案を進めている。

 相田智之常務執行役員電子機材ユニット長と千葉賢治電子機材ガス事業部長は、最近の動向について「今年度は半導体不況で特殊ガス使用量はかなり落ち込んだ。特にメモリー系が低迷し、パワー系デバイスは比較的好調だったが全体のカバーには至っていない。これに対し、最近は九州地区を中心に国内での投資が活発なため、特殊ガスのマイナスをガス供給機器などのハードウエアでカバーしている」と話す。

 2024年の展望として「立ち上がり時期の見通しは顧客ごとにまちまちだが、海外のメモリー需要は徐々に立ち上がってきていると聞いており、国内も24年度下期には立ち上がりが想定されるため、そうした前提で特殊ガス供給の準備を進める。半導体市場は立ち上がると一気に需要が増えるため、しっかり備えていく」(同)とする。

 特殊ガス事業では、グループ会社の大陽日酸JFPが国内4工場を展開。高品質なガスの安定供給体制を整備し、ユーザーから高い評価を得ている。さらに、海外製品を輸入し、品質確認を行いながら国内ユーザーの要求仕様に合わせたカスタマイズ供給などにも力を入れている。

 同社は九州での特殊ガス物流機能強化のため、23年に熊本県菊陽町に特殊ガス物流拠点を新設した。さらに、JFEスチールとの合弁で運営するJFEサンソセンター福山工場(広島県福山市)にクリプトン・キセノンの製造装置を設置して、24年4月の稼働を予定。大分サンソセンターとの2拠点体制とすることで、安定供給につなげる。

 加えて、日本製鉄との合弁で設立した君津サンソセンター(千葉県君津市)に、ネオン・クリプトン・キセノンの製造装置設置を決めた。国内でのネオン生産は同拠点が初となり、26年3月の稼働を予定する。

 「今後も政府の経済安保方針に沿った投資を推進し、特殊ガスの安定供給体制を強化する」(同)。

 ガス供給装置は、特殊ガス、バルクガスともに24年も堅調な推移を見込む。