2024.02.27 【複合機ソリューション特集】商業印刷のデジタル化 自動化など生産性向上が本格化

キヤノンはCanon EXPO 2023で新開発のデジタル印刷機を公開

 商業印刷業界でデジタル化の動きが本格化している。商業印刷市場は、アナログのオフセット印刷が主流だが、市場ニーズの多様化などを背景に、オンデマンドによる多品種小ロット印刷が可能なデジタル印刷が拡大。現在、国内商業印刷市場の1割超を占めている。また、商業印刷業界は慢性的な人材不足に加え、高齢化も進み、自動化などワークフローの改革も求められている。さらに環境面からもデジタル化のニーズは強い。商業印刷業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)化への期待が急速に高まっている。

 カタログや冊子などのグラフィックアーツを取り扱う商業印刷では、印刷物の少量多品種化や短納期化のニーズを受け、オンデマンド印刷やバリアブル印刷が可能なデジタル印刷の需要が高まっている。デジタル印刷機は、高い生産性や高画質、幅広い用紙への対応に加え、正確な画像位置合わせや色安定性が実現できることから、市場が拡大している。

 「商業印刷市場は、まだコロナ禍前には戻っていないものの、デジタル化の流れは着実に進展している。特に、これまで人手に頼っていた行程をデジタル化することにより、生産性向上を目指す動きが本格化している」と富士フイルムビジネスイノベーション(富士フイルムBI)のグラフィックコミュニケーション事業本部DX事業部の鈴木隆義部長は話す。

DXで業務改革

 同社は、商業印刷業界の課題に対応し「DXによる業務改革」を提案。「オフセットとデジタルのハイブリッドな需要に応えるため、製品のラインアップや自動化などのソリューションを強化」(鈴木部長)している。

 具体的には「Add Value from DX」をコンセプトに、パートナー企業と連携して、DXエコシステムを構築。商業印刷業界とブランドオーナーに向け「スマートファクトリー」「マーケティングDX支援サービス」「トランザクションサービス」を提案している。

 スマートファクトリーは、大量印刷を前提とし、オフセット印刷を中心とした従来の生産環境の課題である①各工程が個別に管理され全体最適の観点を持った工程管理が困難②各業務が熟練技術者に依存(属人化)し標準化が困難③時間と手間を要するする工程間作業の可視化・管理が困難、などの解決を目指す。

 「Revoria One Production Cockpit」により、さまざまなメーカーの設備からなる生産工程の進捗(しんちょく)を、統合的に可視化・分析し、工程改善を図り、最大40%の工数削減を目指している。

 もう一つが、顧客接点(店舗・Webサイト・デジタル広告など)から得られるデータを統合、可視化、分析し、企業のマーケティング領域のDXを支援する「Marketing Cockpit」。同社のクラウド上に開発したシステム基盤を使い、データの統合・可視化・分析をサービスとして提供する。また、電子帳簿保存法やインボイス制度などに対応するため、トランザクションDXサービスを強化している。

 さらに今年の1月からデジタル印刷のデータ入稿からプリプレス、印刷、各プリンターまでを一括管理するソフトウエア「Revoria XMF PressReady」の提供を開始した。

 キヤノンは、商業・産業印刷分野を成長分野と位置付け、戦略強化を加速させている。昨年10月に開催したCanon EXPO 2023で初公開した戦略モデルを市場投入する。商業印刷向けB3サイズ対応インクジェットデジタルプレスの「varioPRINT(バリオプリント) iX1700」を4月に、産業印刷市場向けインクジェットラベル印刷機「LabelStream(ラベルストリーム)LS2000」を8月に発売する。

 iX1700は、新開発のインク循環機構搭載の高精細プリントヘッドと高濃度のラテックスインクの採用により、高い稼働率を達成しながら、オフセット印刷に迫る印刷品位を実現。LabelStreamは、同社初の産業印刷向け水性インクジェットラベル印刷機で、最速で毎分40メートルの高速印刷を実現する。

 コニカミノルタジャパンでは、高速デジタルラベル印刷機「AccurioLabel(アキュリオ ラベル)400」の販売を開始した。国内ラベル印刷市場は、ニーズの多様化などを背景に、デジタル化による成長が見込まれている。これまでのミッドレンジに加え、新たにハイエンド機を投入、ハイボリューム領域で攻勢をかけている。

 「創注・受注拡大支援」と「生産性向上支援」の2軸で商業印刷のDX化を推進、印刷業界のビジネス成長と収益力向上に注力する。熟練技術者の不足に対応し、高度で緻密な調整業務をスキルレスで行うことができる簡単設定機能など、省力化ニーズに応えている。デジタルマーケティングに対応した取り組みでは、コニカミノルタジャパンでも、プリントメディア連動のデジタルマーケティングを提供するクラウドサービス「Print パル」を、印刷会社の営業スタイルの変化を支援するサービスとして提供している。

 リコーは、印刷業者とビジネスパートナーとの価値共創に取り組むプラットフォーム「RICOH BUSINESS BOOSTER」を提供し、印刷アプリケーション、生産工程の自動化、省人化などを提案している。製品面では、多様化するニーズに応えるため、用紙対応力や自働化・効率化機能の強化、オペレーターの業務負荷を軽減する。最新機種としては、ゴールドやシルバーなど、最大7色のスペシャルカラーに対応した「RICOH Pro C7500」、高次元の安定性と自動化・省力化を実現した「RICOH Pro C9500」などをラインアップする。

 日本HPの礪波徹デジタルプレス事業部事業本部長は、デジタル印刷機「HP Indigo」のグローバル展開の実績と強みについて「HPのグローバル印刷ネットワーク」を挙げる。工程自動化ソリューション「HP PrintOS Site Flow」を活用することで、自社のECサービスに加え、海外のECサービスの活用が可能だ。

 京セラドキュメントソリューションズも、商業印刷機「TASKalfa PRO 55000c」を新たにラインアップしている。

 今年は、5月に8年ぶりにドイツで開催される国際印刷・メディア産業展「drupa 2024」が開催される。日本各社の参加も見込まれている。

「page2024」に事務機各社が出展、最新製品やソリューション提案

今年のテーマ「連携」、他社とコラボで経営課題など解決

 先ごろ、東京都内で開催された日本印刷技術協会(JAGAT)主催の商業印刷業界の代表的展示会「page2024」には、事務機メーカー各社も出展し、最新のデジタル印刷機やソリューションを提案した。

 今年の展示会のテーマは「連携」。自社にない強みを持つ企業とのコラボレーションにより、印刷業の経営課題などに取り組んでいくという意味を込めて「連携」をテーマとした。積極的な事業転換が求められる中、急がれるデジタル化への対応が焦点となっていた。

富士フイルムグループは、デジタル印刷のワークフローを提案

 富士フイルムグループは、6色トナー使用時も120㌻/分の高速プリントによる高い生産性を誇る「Revoria Press PC1120」やデジタル印刷のデータ入稿からプリプレス、印刷、プリンターまでのワークフローを実現する最新ソフト「Revoria XMF PressReady」を紹介した。印刷業界は、慢性的な人材不足を抱えており、いかにワークフローの自動化を図っていくか大きなテーマとなっている。こうしたニーズに対応している。

 リコーは、多様化するニーズに応えるため、用紙対応力や自働化・効率化機能の強化、オペレーターの業務負荷軽減に取り組んでいる。カラープロダクションプリンターとして「DX&Creation(共創)」をコンセプトとした「RICOH Pro C9500」「RICOH Pro C7500」などを紹介。C9500では、高次元の安定性と自動化・省力化を、また、C7500ではゴールドやシルバーといった最大7色に対応した多彩な表現力を訴求した。

 キヤノンは、同社初の産業印刷向け水性インクジェットラベル印刷機「LabelStream(ラベルストリーム)」を紹介。商品や日用品の外装に用いられるラベルの印刷機は、アナログからデジタルへの移行が加速している。

 同製品は、新開発のインク循環機構搭載の高精細プリントヘッドと高濃度ラテックスインクを搭載し、高速印刷を実現する。今年の8月に国内発売し、海外にも投入する。

 コニカミノルタは、〝変化に応えるプリントビジネス〟をキャッチフレーズに紙とデジタルの共創を提案。昨年11月に発売したデジタル印刷機「AccurioPress C84hc」や、印刷工程の省人化、自動化を実現するワークフローとして「AccurioPro Neostream」、デジタル印刷機を対象にしたカーボンオフセットサービスなどを訴求した。

 京セラドキュメントソリューションズジャパンは、商業印刷機「TASKalfa PRO 55000c」を日本初公開した。独自のエンジンを多数搭載し、インクジェットイノベーションをアピールしていた。

エプソンは最新の大判インクジェットプリンターを訴求

 エプソン販売は、グレーインクを搭載し、9色機同等の写真画質を実現する「SC-P8550D」など、業種や用途にあった幅広い大判インクジェットプリンターを訴求した。