2020.05.01 逆風の石炭火力発電所、バイオマス混焼に転用を コンサル会社が提言

イギリスには、石炭からバイオマスに燃料転換した火力発電所もある

半炭化された燃料が運ばれている半炭化された燃料が運ばれている

野積みされた半炭化された燃料野積みされた半炭化された燃料

 気候変動問題を受けて、国内のメガバンク2行が4月に、新たな投融資をしないと相次いで表明した石炭火力発電所。市場調査・コンサルティング会社のシード・プランニング(東京都文京区)は、「今後、設備が座礁資産化することが懸念される」とし、「既設の石炭火力を活用してバイオマスを混焼する」ことを提言するリポートをまとめた。

 「既存の設備を活用したコストミニマムな再生可能エネルギーの導入施策を志向する必要がある」とし、バイオマス混焼が「現実的な選択肢」だと指摘している。

 リポートは、19年10月-20年2月にかけて、関係企業や有識者らへのヒアリングなどをもとにまとめられた。

 リポートによると、RE100イニシアチブには、20年2月現在、世界で225社、国内で32社が参加するなど、パリ協定やSDGsを契機として、企業による脱炭素の動きが加速している。

 国内では19年10月時点で稼働している石炭火力発電所は92カ所で、総設備容量は約46GWに及ぶ。だが、17年以降、少なくとも新設する9計画が「充分な事業性が見込めない」などとして、中止が相次いでいるという。

 一方、国が15年7月に閣議決定した30年のエネルギーミックスでは、石炭火力を26%にまで抑えることを目標とし、非効率な石炭火力を環境に調和した利用に転換するため、クリーン・コール・テクノロジーと呼ばれる技術開発を促進。石炭をガス化して高効率化する実証などを進めている。

 ただ、リポートでは、「高効率化に伴うコスト増」や、「技術の普及までの期間が長い」といった理由から、技術開発の成熟度や二酸化炭素(CO2)削減に資する貢献度などの点を踏まえて、30年のエネルギーミックスの目標に向けて、石炭火力は「バイオマスによる燃料転換が最も効果的」だと総括している。

 同社リサーチ&コンサルティング部は「短期的に、脱石炭を進めながら、再エネを増やしていくためには、バイオマス混焼への転用が現実的だ」と話す。

 使用分を植林することが前提となるバイオマスだが、変動型の電源と比べ「固体として保存できるなどハンドリングの良さがあり、再エネとしては潜在的に拡大させやすい」(同部)という。

 既存の火力発電設備では、石炭に木材3%ほど混ぜて燃焼させるのが限界だが、事前に半炭化して燃料化すれば、木材の割合を高めることも可能だ。既に大手化学メーカーの宇部興産などが実証設備を稼働させている。

 リポートでは、現行の石炭火力発電所で10%のバイオマス混焼を行った場合、年間で約2600万トンのCO₂削減効果があるとの試算も示した。

 同部は「東南アジアでは日本企業がバイオマス用の木材ペレットの製造拠点を設置する動きが出てきている。これを混焼用向けに転換を推進することも必要だ」と話している。