2024.04.13 “和製”生成AIの開発競争が過熱 「チャットGPT」など海外製との違いとは
生成AIの世界市場予測
「インターネット以来の発明」とも言われる生成AI(人工知能)。海外勢を中心とした開発競争に、日本企業も名乗りを上げ始めています。NECやNTT、KDDIなどの大手企業が日本語に特化した生成AIを矢継ぎ早に投入しています。拡大途上の生成AIの現状について、海外製との違いなど素朴な疑問を新入社員がベテラン記者にぶつけてみました。
新入社員 生成AIとはどのような技術なのでしょうか。
記者 生成AIとは、文章や画像、音声などさまざまなコンテンツを自動で作り出すAI(Artificial Intelligence)のことです。例えば、キーワードや少しの情報から、記事を下書きしたり、写真から似顔絵を描いたり、音声を合成したりできます。
新入社員 なるほど。どういう企業が開発しているのでしょうか。
記者 火付け役となったのは、米国の新興企業であるオープンAIが開発した生成AI「Chat(チャット)GPT」です。2022年11月末に公開されて以来、米国の巨大IT各社が動きを活発にしました。
オープンAIに出資するマイクロソフトは、チャットGPTを自社のクラウドサービス「Azure(アジュール)」上で利用できるサービスを展開しています。グーグルも昨年12月に次世代生成AI「Gemini(ジェミニ)」を公開し、今月9日には生成AIを使った動画作成サービス「Vids(ビズ)」を開発したと発表したばかりです。これまでは主に米国企業が生成AIを主導してきたと言えるでしょう。
新入社員 日本企業も頑張っているのでしょうか。
記者 もちろん、日本企業も生成AIの開発に力を入れています。NECやNTT、KDDIなど大手通信企業が生成AIを開発し、提供を始めています。
生成AIは、大量のデータを深層学習することで文章の作成や要約などをできるようにする「大規模言語モデル」(LLM)と呼ばれる技術が基盤として使われています。これまでの生成AIは、英語を中心に学習させているため、日本語の精度向上が課題とされていました。そこに目を付けた日本企業が、日本語に特化したLLMで、精度を高めた日本向け生成AIを投入するようになってきたのです。
新入社員 日本企業の生成AIはどういったものなのでしょうか。
記者 NECは日本語特化のLLMをいち早く商用化し、昨年7月から一部のサービスを提供しています。「cotomi(コトミ)」と名付けたLLMを使い、各業種・業務のノウハウを生かした「特化モデル」を整備することで、医療や金融などの幅広い業種の変革を支援したいと考えています。
一方で、国内通信大手各社の主導権争いも激化しています。NTTは昨年11月、日本語に特化した独自LLM「tsuzumi(ツヅミ)」の開発を発表し、今年3月から企業向けサービスの提供を始めました。KDDIも3月、東京大学発のスタートアップ「ELYZA(イライザ)」を子会社化して生成AIに参入しています。ソフトバンクも24年度中に国内最大級の生成AIを完成させる予定です。
新入社員 海外企業だけでなく、日本企業でも開発競争が過熱しているのですね。実際、生成AIの市場規模はどれくらいなのでしょうか。
記者 電子情報技術産業協会(JEITA)は、生成AIの世界市場が30年に約2110億ドルに拡大すると予測しています。23年は106億ドルとしており、その約20倍になります。日本市場も30年に約1兆7774億円と現在の15倍になると見ています。専門分野での活用が広がれば、さらに需要は高まるでしょうね。
新入社員 すごい市場なのですね。生成AIには課題もあるのでしょうか。
記者 課題はあります。学習データの偏りによる差別などの倫理的な問題や、生成物の真偽、著作権の明確化といった課題です。企業としてこうした課題の解決に取り組んでいくことはもちろんですが、利用する側もリテラシー向上を含めた責任ある対応が求められてきます。