2024.04.19 【やさしい業界知識】ルームエアコン

寒冷地でも普及率向上

夏場の熱中症対策には必需品

 ルームエアコンは、基本機能として室内空間を冷やす・暖めるほか、高級タイプの機種では湿度を調えたり、換気機能を搭載するほか、高性能フィルターで集じんしたり、イオン発生機能やUV照射、プラズマ放電機能などを搭載して空気を浄化する技術まで盛り込み、室内の快適な空気環境を創出する。

 エアコンは大気の熱を有効に活用できるヒートポンプ技術を用いて、部屋の熱を外に捨てたり、外の暖かい熱を部屋に取り込み、冷やしたり、暖めたりするシステムで、熱の移動には冷媒ガス(フロンガス)を活用する。

 国内で市販される一般的なルームエアコンは壁掛け型といわれるもので、室内機と室外機があり、これらをつないでシステムとして動かすため、冷媒配管や電気配線など種々の設置工事が伴う。

 商戦ピークを迎える夏場はこの設置工事が集中する。このため、近年の人手不足なども加わり、エアコンを購入してから使えるまで2週間以上かかるケースもあるため、エアコン業界では〝商戦の平準化〟が大きなテーマとなっている。

市場規模

 ルームエアコンの市場規模は、ここ10年では年間800万~1000万台超の大きな需要がある。内閣府の消費動向調査(2024年3月末)によると、2人以上の世帯における普及率は92.5%、保有台数は約3台(2.88台)となる。

 近年のエアコン市場での大きな変化は、コロナ禍に見舞われた20年度で、この時、史上初めてルームエアコンの国内出荷台数が年間1000万台を超えた(1009万7000台/日本冷凍空調工業会調べ)。

 この前後も、上がり・下がりは見られるものの、900万台前後の旺盛な需要がある。24年度も870万台強(同工業会予測)と引き続き高水準の需要が見込まれている。

 20年度の1000万台超えの需要は、当時の巣ごもり消費の拡大、1人当たり10万円の特別定額給付金の支給といった異例の要因が加わったことによるものだが、それでもルームエアコン全体は高水準の需要があるといえる。

 この背景には、ルームエアコンが〝必需品〟となったことが大きい。とりわけ夏場の熱中症対策にはエアコンの適正使用が不可欠となっている。

 また、暖房性能の進化により酷寒でも暖房運転が可能となっていることから、北海道など寒冷地域でもエアコン普及率が高まるほか、子ども部屋、寝室など複数台数所有による部屋別普及が広まっていることも関係して、市場の裾野が拡大している。

さらなる省エネへ

 カーボンニュートラルの実現に向け、省エネが大きなテーマとなる中、約3割と家庭で最も消費電力が多いエアコンの省エネが課題となっており、省エネ性能に優れた最新機種への買い替え促進も大きなテーマとなる。

 省エネ性能の指標にはAPF(通年エネルギー消費効率)が使われ、この値が大きければ大きいほど省エネ性能が高い。

 ルームエアコンは省エネ法の改正により、27年度には、現行機種より省エネ性能がさらに高いAPFの新たな目標基準値が示され、より省エネ性能に優れた開発が急務となっている。

(毎週金曜日掲載)