2024.04.23 HAPSと低軌道衛星、光無線で通信 ソフトバンク、世界初の技術実証へ

ソフトバンクが公開したHAPSの模型=23日、東京都港区

光通信装置の模型光通信装置の模型

 宇宙用途で急速に発達が進む「光無線通信」を、空飛ぶ基地局と呼ばれる「HAPS」(成層圏通信プラットフォーム)に応用する研究が進んでいる。ソフトバンクは23日、地上約20キロメートルの成層圏で滞空するHAPSと、2000キロメートルを飛ぶ低軌道衛星を光無線通信でつなぐ世界初の実証に乗り出す方針を明らかにした。2025年に光無線通信を搭載した衛星を打ち上げ、26年から実証を始める。

 HAPSと低軌道衛星が双方向10ギガビット毎秒で光通信できる想定で、実現すれば世界最速になるという。実証では、さらに、高度約3万6000キロメートルを地球の自転と同期して周回する「静止軌道周回衛星」や小型地上局との光接続試験も行い、地上局が天候によって切れてしまった場合に、別の基地局から通信を維持するサイトダイバーシティの検証やトラフィックの制御などにつなげたい考え。

 ソフトバンク先端技術研究所航空技術開発課の柳本教朝研究員は「人類がまだやったことのない領域なので、何が起きるかわれわれも分かっていない」とした上で「これによって多数のノウハウが得られるかと考えており、より高速かつ安価で量産できるシステムを作っていきたい」と意気込む。

 光無線通信は、周波数帯の割り当てなしで数テラバイト毎秒の超高速通信が可能で、次世代高速通信6G時代の技術として期待されている。一方で、コストが多額な上に、レーザーのような光で通信するため、気象の影響を受けやすく1対1通信しかできないなど、悪天候でも多通信が可能な電波に比べ、導入が遅れているのが現状。

 気象の干渉を受けない衛星同士の通信や宇宙から地上への片方向通信の実証が急速に進んでいるが、成層圏を飛ぶHAPSは振動の影響もあり、宇宙用より高度な光通信装置が求められるという。

(25日付の電波新聞/電波新聞デジタルで詳報します)