2024.04.26 【やさしい業界知識】テレビ
有機ELテレビが充実
高画質でネット動画視聴も
国内のテレビ市場は2023年、前年同期比10.1%減の437万3000台(電子情報技術産業協会=JEITA出荷統計)の出荷となった。18年以降、買い替え需要を捉え前年を上回る出荷となり、20年は新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛による〝巣ごもり〟需要や特別定額給付金支給などで順調に拡大したが、21年以降3年連続で前年を下回っている。
テレビ市場は、08年までは年間800万~900万台の出荷だったが、10年のエコポイント終了と11年のアナログ放送停波に伴う駆け込み需要により10~11年の2年で5年分を出荷。12年以降は反動から低迷が続いていた。
14年以降はメーカー各社がフルハイビジョンの4倍の画素を持つ高精細4Kテレビを投入し40V型以上の大画面テレビの多くが4Kになってきている。市場全体の4Kテレビの構成比も高まってきており、18年以降は出荷台数が増加に転じていた。
薄型テレビの買い替え年数が約10年(内閣府調査)になっており08~09年に購入したテレビの買い替え時期に入ってきていることで出荷を伸ばしたが、コロナ禍が終わり、外出機会が増えたことで支出先が変わったことも影響している。
買い替え一服感
21年までは大画面テレビの買い替えは堅調で、4Kテレビの出荷も伸び、テレビ市場全体に占める4Kの台数構成比は半数を超え、金額構成比では8割を占めるまでになった。ところが22年以降は大画面テレビも前年割れが続き、買い替えも一服感が出ている。
主要テレビメーカー各社の動きをみるとパナソニック、シャープ、ソニー、元東芝のTVS REGZAなどが4Kテレビを発売。現在は家電量販店最大手のヤマダホールディングスが船井電機と提携し独占で船井ブランドのテレビを販売しているほか、アイリスオーヤマなども4Kテレビを投入している。海外メーカーでは韓国LGエレクトロニクスや中国のハイセンス、19年からは中国テレビ大手のTCLも日本市場に本格参入した。
次世代のテレビとして注目されている有機ELテレビも充実してきた。パナソニック、ソニー、TVS REGZA、船井電機が4K有機ELテレビを発売しているほか、20年からはシャープも有機ELテレビを投入。海外メーカーではLGやハイセンスなどが発売する。
8K製品も展開
有機ELは自発光の特性を生かした黒の再現性や階調表現の高さなどが優れており、高付加価値製品として販売を伸ばしてきていた。TCLは量子ドットLEDテレビを展開している。シャープはいち早くフルハイビジョンの16倍の画素を持つ8K液晶テレビを発売し、LGなども8K製品を展開している。20年以降はミニLEDバックライトを搭載した液晶テレビの投入も本格的に始まり、現在は有機ELに対し、液晶の最上位機はミニLEDバックライトモデルが各社から発売されるようになっている。
最近は放送だけでなくインターネット動画も高画質で視聴できることを前面に出すメーカーが多い。若者層のテレビ離れも影響しており、ネット動画を大画面テレビで視聴するよう提案し、買い替えや買い増しにつなげていく狙いもある。
ただ市場環境は厳しい。三菱電機は21年にテレビ事業から撤退。テレビメーカー各社も製品展開に選択と集中をしており、大画面高画質で映像コンテンツを楽しめる魅力を伝えていくことが求められている。
(毎週金曜日掲載)