2024.04.29 「接続部品」の世界へようこそ EVや自動運転で高まる重要性 その役割とは
接続部品のグローバル出荷推移
機械的な動作をする「接続部品」に今、注目が集まっています。家電やスマートフォン、半導体製造装置、鉄道などあらゆるモノに組み込まれていますが、電気自動車(EV)の普及拡大や自動運転車の開発加速で、これまでとは異なる性能の接続部品が必要になっているからです。そんな接続部品メーカーの営業担当となった新入社員の疑問にベテラン記者が答えつつ、業界の現状と将来展望についても解説します。
新入社員 接続部品と言われても正直よくわかりません。どのような部品のことを指しているのでしょうか。
記者 接続部品とは、機械的な動作をする部品のことで、以前は「機構部品」と呼ばれていました。コネクターやスイッチ、リレーなどが該当します。家電やスマホといった身近な電子機器から事務機器、通信機器、ミリタリー関連などあらゆる工業製品に使用されている重要な部品です。
新入社員 それらの製品を動かすために必要な部品なんですね。市場規模はどのくらいでしょうか。
記者 部品メーカーなどが加盟する電子情報技術産業協会(JEITA)の統計によると、2023年の世界の接続部品出荷額は、前年比4.9%減の1兆328億円と、3年ぶりのマイナスとなりました。
新入社員 マイナス成長となった要因は何だったのでしょうか。
記者 中国関連の需要低迷や、流通在庫過多となったことによる在庫調整などが市場に影響を与えました。ただ、EVの拡大なども期待できるため、24年は成長に転じると予想されています。
新入社員 日本で生産するメーカーが多いのでしょうか。
記者 分野を問わず、海外生産比率が高まってきています。中国や東南アジアを中心に、海外の量産工場が増えてきました。ただし、5Gスマホ用など最先端コネクターは、日本国内の工場で生産する企業もあります。電子部品の中でもコネクターは相対的に国内生産比率が高いです。
新入社員 メーカー数も多いのでしょうか。
記者 接続部品の中でもコネクターとスイッチは生産メーカーが多いです。電源のオン/オフなどにも良く使われているスイッチは、機器と人とのインターフェース用や、機器の信号切り替え用として用途は広く、品種もとても多いです。
コネクターは、機器内配線や機器間インターフェースに使用されています。電子部品の中では、米国や欧州などの海外メーカーが日本でも高いシェアを持っているのも特徴になります。
スマホなどのモバイル端末向けでは、日系メーカーが世界的にも高いシェアを持ち、海外大手スマホメーカーにも最先端のコネクターやスイッチなどが多数採用されています。
新入社員 新製品の開発も活発なのでしょうか。
記者 民生用や産業用、車載用などさまざまな分野で接続部品も「軽薄短小」が追求されています。高速伝送や大電流、環境性能、長寿命化などへの対応もますます求められています。
特にEVをはじめとする自動車分野が注目されています。自動運転車向けでは、車外からの大量の情報を認識し、高速演算処理するために高速信号に対応したコネクターが必要など、最先端の接続部品の開発にもつながっています。EVでも大電流・高耐圧のコネクターが要求されており、車載用コネクターの技術開発を加速させています。
新入社員 接続部品は幅広い分野で活躍しているのですね。これからも期待できそうです。
記者 そうですね。技術革新により接続部品に対するニーズは確実に高まっていくと考えられます。5G、自動運転、EV、AI(人工知能)など、今後発展が見込まれる分野では、これまでよりも高性能な電子機器や電子部品が必要になってきます。接続部品の役割もとても重要になると言えるでしょう。
技術革新のトレンドや先を見越して世界的な需要に対応することが、接続部品メーカーには求められます。それが業界発展の鍵を握ることにもなるでしょう。