2024.05.17 【やさしい業界知識】IoT

産業界に急速に普及予兆検知など
人手不足対策に一役

 商品に小型電子タグを取り付けスマートフォンや店舗内の機器から商品の在庫状況をクラウドに自動集約して在庫を管理する。工場の生産設備に取り付けたセンサーから得たデータを分析して設備異常の予兆を検知する。さまざまな機器をインターネットとつなぐIoT(Internet of Things=モノのインターネット)は産業界に欠かせない技術となっている。

 さまざまなモノがネットに接続され情報を交換したり制御したりできるIoTは、1999年に米国から始まったとされる。当時は機器や商品などをインターネットにつないで管理する概念として捉えられていたが、AI(人工知能)やセンサー技術の発達により、現在では幅広く使われるようになった。

 管理の視点から見ると、工場の製造装置の監視や銀行のATM(現金自動預払機)の遠隔監視などに使われている。さらに管理の枠を超え、カメラや棚センサーなどの機器とクラウドや人工知能(AI)と組み合わせることでIoTの機能は飛躍的に拡大。店舗では来店客の動きや購入商品をAIカメラで判別して自動で支払いを済ませレジを通ることなく買い物ができるシステムや、オフィスの社員の顔を認識して不審者がいた場合にアラートを出すなど多種多様なサービスが展開されている。

 IT専門調査会社のIDC Japanが今月13日に発表した国内IoT製品・サービス市場予測によると、2023年のユーザー支出額の実績は6兆4672億円。23~28年の年間平均成長率は8.0%で、28年には9兆4818億円に達すると試算されている。

導入促進分野

 労働人口の減少や労働規制の強化による人手不足の深刻化に伴い、特に導入促進が見込まれるのが物流や建設、医療分野だ。物流効率の向上に資するスマート倉庫管理や、建設作業の効率化に向けた建設資産管理などさらに活用事例が拡大するとみられる。

 導入目的も、これまでの単純な数値計測から、物流分野では配送経路の最適化、製造業では機械学習や分析と組み合わせた機械装置の予兆保全など、より高度な活用に変化しつつある。

リスクや課題

 一方で課題となるのが、ネットワークにつながっていなかったモノがつながったことによるセキュリティー上の脅威だ。

 屋外の監視カメラは人の目がない夜間などに、悪意を持った人にソフトウエアを書き換えられる危険性がある。さらに、ネットワークにつながった機器が管理者不在のまま放置され、ソフトのアップデートの配信が停止すれば、サイバー攻撃に悪用されるリスクも増大する。

 相互通信や遠隔制御といった便利さの半面、システムの脆弱(ぜいじゃく)性を突いた悪意ある攻撃も多様化していくことを念頭に置いたセキュリティー対策も企業の責任になっている。

(毎週金曜日掲載)