2024.06.07 【やさしい業界知識】抵抗器
電子回路の適正動作をサポート
車載、産機、スマホなど需要拡大
抵抗器は、流れる電流の量を制限したり、調整したりすることで、電子回路を適正に操作させる役割を果たす電子部品。単位はΩ(オーム)。
抵抗器は、コンデンサー、インダクターとともに電子回路を構成するための基本となる電子部品とされ、スマートフォンやタブレット端末などのIT端末をはじめ、AV機器/白物家電、自動車電装機器、産業機器/ロボットなど、あらゆる電子機器に搭載される。
電子情報技術産業協会(JEITA)の電子部品グローバル出荷統計によると、2023年度(23年4月~24年3月)の抵抗器グローバル出荷額は前期比7.8%減の1859億円と4年ぶりにマイナス成長となった。産機やICT関連の低迷や中国経済停滞などが影響した。
抵抗器は大別して、抵抗値が一定の固定抵抗器、抵抗値を変更できる可変抵抗器(ポテンショメーター)、広義の可変抵抗器の一種でドライバーなどで操作し、回路調整を行う半固定抵抗器(トリマーポテンショメーター)がある。
固定抵抗器の形状には、リード線を持つリード型抵抗器と、リード線を持たず基板の表面に実装するチップ抵抗器がある。
主流はチップ
現在、主流で使用されているチップ抵抗器は、金属や金属酸化物とガラスを混合焼結したメタルグレーズ抵抗体を数マイクロメートルの厚みに印刷した厚膜チップ抵抗器が汎用(はんよう)チップとして用いられている。高精度回路にはニッケルクローム系金属を数ナノメートルの蒸着厚みにした薄膜チップ抵抗器が使用される。
抵抗値や定格電力などからさまざまなサイズが生産されているが、現在最も生産数量が多いと推定されるのは1.0×0.5ミリメートルの1005サイズ。ハイエンドスマホやタブレットなどでは0.4×0.2ミリメートルの0402サイズが超小型チップとして実装されている。
今後、IoT端末やモジュールの小型化が進展する。このため、チップ抵抗器への小型化ニーズが一段と強まっており、次世代チップとして、0201サイズなどの提案も進められている。
ECU搭載増加
車載用抵抗器は、相次ぐ新機能の搭載によりECUの搭載点数が増加し、多くの用途でさまざまな抵抗器が使用されるようになった。特に電動化でモーター駆動関連のDC-DCコンバーター、インバーター、電池、チャージャー向けのパワー抵抗器の需要が増大している。また、ADAS/自動運転関連の機能の向上もECU搭載点数を増大させ、車載用抵抗器需要を伸長させている。
可変抵抗器は、AV機器の音量調節用(ボリュームと呼ぶ)に回転型やスライド型が使用されていたが、近年はIC化によってリモコンなどによる音量調整が一般化。一方、放送局では依然としてデジタル音声卓(ミキサー)で高性能可変抵抗器が採用されている。
産業機器分野では、ジョイスティックコントローラーで幅広く使用されている。また、計測機器をはじめ、回路調整用途で用いられている。
生産現場で使用
半固定抵抗器は、電子機器の生産現場の調整工程で使用される。例えば液晶ディスプレーのちらつき調整、BDレコーダーなどの光ピックアップにおける受光感度調整、各種センサーの感度調整、電源部における回路調整などで使われている。(毎週金曜日掲載)