2024.06.14 【やさしい業界知識】インダクター

磁場にエネルギーを蓄える

三大受動部品の一つ、幅広い用途

磁気エネルギー

 インダクターは、流れる電流によって形成される磁場にエネルギーを蓄えることができる電子部品。銅線をスプリング状に巻回したコイル構造に電気を流すと電流の流れる方向の右回りに磁界が発生し、電気エネルギーを磁気エネルギーの形で蓄えることができる。

 インダクターは、コンデンサー、抵抗器とともに、三大受動部品(LCR部品)と呼ばれ、電子回路の基本となる重要な電子部品とされる。記号はL。単位はH(ヘンリー)。インダクターはトランスとともにコイルに分類される。

 インダクターは①電流の変化を抑え、ノイズを吸収する②交流の電圧を上げたり、下げたりできる③直流を通して、周波数で信号をより分けるといった特徴を持つ。

 製造方法によって、一般的な巻線タイプのほか、積層タイプ、薄膜タイプなどがある。

 インダクターの用途は大別して、電源用、フィルター用、高周波用がある。電源用インダクターはニッケル(Ni)-亜鉛(Zn)系フェライトコアに銅線を巻回したフェライト系がさまざまな電源回路で使用されている。その中で、スマートフォンのDC-DCコンバーター向けでは、小型・大電流対応のため、鉄(Fe)-シリコン(Si)系などのコアを使用したメタル系パワーインダクターの需要が伸びている。

LCフィルター

 フィルター用インダクターは、信号回路において一般的にコンデンサーと組み合わせてLCフィルターとして使用される。特定の周波数の信号だけを通し、不要な周波数の信号をカットする目的で使用されるもの。LCノイズフィルターとして、電子機器のノイズ対策用に需要が拡大している。

 高周波インダクターは、スマホをはじめ、自動車・産業機器などを含めた無線通信モジュールなどで使用される。高周波回路の共振回路、インピーダンスマッチング、チョークとしての用途に対応する。

 種類としては、Q値や許容電流の要求に対しては巻線型が強い。L値範囲が広く、小型化には積層タイプ、L値精度で小型化には薄膜型が適している。

スマホも産機も

 インダクターが搭載される最終アプリケーションは、スマホやタブレット端末などのモバイル端末から自動車、産業機器など幅広い。中でも需要が伸びているのが車載用の高信頼性タイプ。カーエンターテインメント機器や、エンジン/トランスミッションの制御装置、モーターのノイズ対策など、さまざまな用途で使用される。特に、ADAS/自動運転関連でのセーフティー用途向けに、高信頼性の高周波インダクターの需要増大が見込まれている。

超小型チップ

 5G(第5世代移動通信規格)の本格化により高機能化が進むスマホでも、高周波回路の誤動作防止のため高特性のチップインダクターが使用される。スマホやウエアラブル端末等の高機能モバイル端末では、0402サイズなどの超小型チップも搭載されている。(毎週金曜日掲載)