2024.07.12 【やさしい業界知識】分析機器

電子顕微鏡は国際競争力を持ち、活用の幅も広がる

先端分野で多様な製品活用

半導体製造でも導入

 分析機器は、物質の組成や性質、構造、状態などを定量的・定性的に測定する機器。学術研究をはじめ、産業や医療などの先端分野で活用され、多様な分析機器が開発されてきた。日本は電子顕微鏡やX線分析装置などで高い国際競争力を持つ。分析機器はイノベーションを生み出すために必要不可欠な機器であり、世界的に政府が支援を提供するケースは少なくない。

純水の清浄度評価

 半導体製造工程でもさまざまな分析機器が導入されている。製造工程では、ウエハーの洗浄や薬品の洗い流し、薬液の希釈や濃度調整で不純物を除去した純水が大量に使用される。純水の精度は半導体製品の品質に影響するため、製造工程で使用する前に分析計で清浄度を評価する。

 液中微粒子計測器は、粒子にレーザー光を当てて生じる散乱光を検出。薬液や純水に混入した極微小な粒子を高精度で計数する。

 微細化の進行に伴い、より高水準で清浄度が求められるクリーンルームの清浄度管理は気中微粒子計測器が担う。空気をポンプで吸引してレーザー光線を当てることで粒子を一つずつ計測する。

 ウエハー表面の金属汚染の測定はX線分析装置などを使用。絶縁膜中に金属が混入すると絶縁破壊を招く恐れがあり、各種の分析機器が活用されている。

 ウエハーの膜厚の精度も半導体の品質に大きく影響する。先端品では数ナノメートルレベルの超薄膜が要求されており、X線分析装置を使って膜厚の精度が管理されている。

 電気自動車(EV)に搭載される車載用リチウムイオン電池(LIB)の評価にも分析機器が欠かせない。

 電子顕微鏡は数百~数百万倍の倍率で試料を拡大して観察できる。LIBの主要部材である正極材の評価には、電子線を試料に当てるSEM(走査電子顕微鏡)や薄く切った試料に電子線を透過させるTEM(透過電子顕微鏡)などを使用。粒子の大きさや結晶の方位からコバルトやニッケルなどの元素の分布を判別する。

 電池は充放電を繰り返すことで劣化していく。物質の化学状態の変化の把握や電池の品質管理にも分析機器が用いられている。

作業時間短縮に寄与

 分析機器メーカー各社は、分析や解析を効率化して作業時間の短縮に寄与するシステムを開発し、機器への対応を進めている。

 オンライン操作に対応した分析機器なら、物質の化学反応を行う反応槽での反応の進み具合を遠隔で連続的にモニタリング可能だ。分析機器内の検出器でガスの流量や圧力値をリモートで監視し、故障に至る前の予兆を捉えるサービスも提供されている。

 取り組みは材料開発の効率化にも及ぶ。膨大なデータベースから、目的に合った有望で特許未出願の化合物の組み合わせを人工知能(AI)が短時間で選定する。

(毎週金曜日掲載)