2024.07.12 【電子部品技術総合特集】研究開発取り組み 日本電波工業 上木健一取締役常務執行役員技術本部長

上木 取締役

AIサーバー市場に注目
JAXAとの共創活動開始

 日本電波工業は、長期経営戦略「Vision2030」で掲げるNDKグループのビジョン「周波数でデジタル社会の未来を創る」の方針のもと、先々を見据えた要素技術開発、製品開発に力を注いでいる。

 上木健一取締役常務執行役員技術本部長は「最近特に注目しているのは、AI(人工知能)サーバー市場。AIサーバーではSPXO(クロック用水晶発振器)などが使用され、今後高い市場成長が見込まれるため、差動出力タイプSPXOの小型品開発などを進めている。AIサーバーでは高周波数化により、従来型サーバーと比べ、フォトリソ比率が高まる見込み」と話す。SPXOは3225/2520サイズの高精度品を今年度下期から量産開始を予定するほか、「2016サイズ品も2025年春頃の量産化を目指している」(上木常務)。

 車載用では、SPXOやTCXO(温度補償型水晶発振器)の温度範囲拡大などを推進する。

 5Gスマートフォン向けでは、76.8メガヘルツサーミスター内蔵水晶振動子で実績を拡大。高品質の原石を自社生産し、フォトリソグラフィー技術を生かして超小型水晶デバイスを供給することで差別化を図っている。さらに、次世代の153.6メガヘルツサーミスター内蔵水晶振動子の技術開発も進めている。

 5G基地局向けでは、OCXO(恒温槽付き水晶発振器)の7×5ミリメートルサイズ品を量産中で、14×9ミリメートルサイズ品のサンプル展開も進めている。

 研究開発の中核となる狭山事業所(埼玉県狭山市)では人工水晶の育成、加工技術や水晶振動子・振動発振子の技術開発、超音波関連の開発など実施。千歳テクニカルセンター(北海道千歳市)はQCMセンサー開発や無線システムの受注開発などを行う。

 新規市場開拓にも積極的に取り組んでいる。その一つとしてJAXAとの共同で「宇宙用QCM(水晶振動子式微小天秤〈てんびん〉)センサ刷新事業」に関する共創活動を開始。さらに、半導体製造装置向けに「Twin-QCM リアルタイムプロセスモニタ」を開発した。半導体プロセス形成の状態をリアルタイムでモニタリングし、製造工程のタクトタイム向上に貢献するもので、「引き合いが増加している」(上木常務)という。

 また、開発業務の効率化に向け、機械学習を活用した不良予知システムを開発し、23年度下期以降、一部導入開始した。