2024.07.12 【電子部品技術総合特集】研究開発の取り組み ニチコン 高森信之執行役員NECST事業本部技術開発本部長

高森 執行役員

各拠点同士で共同開発

効率化・開発スピードアップ

 ニチコンは「NECST事業で飛躍~ブランド力、デザイン力向上でエネルギーソリューションのニチコンへ~」をテーマに社会課題解決に取り組む。同社の高森信之執行役員NECST事業本部技術開発本部長は「研究開発拠点のセンター同士の共同開発で効率化、開発スピード短期化など大きな成果が出ている。コンデンサ事業で進めるAI活用でも成果が出ており、飛躍につながる一歩となった」と語る。

 同社では2026年3月期を最終年度とした中期成長目標「Vision 2025」を推進。5カ年の計画で、期間中に研究開発投資約320億円と設定。これまでに約184億円を研究開発費として活用した。

 25年3月期の研究開発費は67億円を見込んでおり、前年比1.8%増額する。コンデンサ事業では先端デバイスの開発強化、NECST事業ではハード・ソフト開発スピードの強化を投資のテーマとしていた。

 NECST事業では昨年度①共通基盤技術開発②デザイン、ユーザビリティーなど高付加価値化③コトづくりに向けたEMS技術開発-の三つに注力。

 今後は共通基盤技術を推進し、開発スピードを高めながら、ユーザビリティーを高める研究を連携する東京大学と推進。充電器のケーブルの軽量化などを展開。ネットワーク化ではリモートメンテナンスだけでなく、エネルギー情報の管理を推進し、バーチャルパワープラントのような新しいビジネスモデルにつなげる。

 コンデンサ事業では製品の信頼性を高めるため、製品試験などで積み上げたデータをAI(人工知能)で機械学習させる予測モデルに注力。昨年からスタートさせているが6000件のデータを解析した結果、予測確率が85%となっており、精度が高くなっている。現在は製品の開発に使っているが、今後は取引先への最適な製品提案につなげる。

 国内の研究開発拠点は電源センター(東京都中央区)と開発センター(京都府亀岡市)があり、共同で製品開発を進めている。家庭用蓄電システム、V2H、急速充電器、外部給電器のソフト開発を一元化。ソフトの重複研究開発を防ぐだけでなく、認証の取得期間の短期間化につながるなど研究開発の効率化やスピードアップにつながった。

 コンデンサ事業の研究開発拠点は長野県に技術センターがあり、各工場の中にある技術本部と連携。ユーザーの声を拾いながら製品開発に進める。