2024.07.19 【やさしい業界知識】エコキュート

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補助金追い風に導入加速

累計出荷1000万台まであとわずか

 自然冷媒(CO₂)ヒートポンプ給湯機「エコキュート」は、大気の熱をくみ上げ(ヒートポンプ)、有効に活用することで、湯沸かしに必要なエネルギーを削減できる高効率な給湯機として、2001年にコロナから発売された。

 エコキュートの技術は、自然冷媒を使ったカーエアコン開発に取り組んでいたデンソーが、東京電力・電力中央研究所と共同開発プロジェクトを組み、完成させた。

 大気の熱を有効活用して高効率な給湯を可能とする技術は、エコキュート発売当初から注目を浴び、高額な設備ながら年々販売が拡大した。

 23年8月には国内累計出荷台数が900万台を突破、1000万台達成もあとわずかのところにきている。

省エネに貢献

 カーボンニュートラルの実現に向けて、CO₂排出削減に効果が大きい省エネ機器への関心が高まる中、家庭内でのエネルギー消費が多い給湯分野の省エネにエコキュートをはじめとした高効率給湯機は大きく貢献する。

 エコキュートは、投入した電気エネルギーの3倍以上の熱エネルギーを得ることができ、ランニングコストは電気温水器の3分の1以下と経済的だ。電気代の節約意識が高まる折、経済性の面でも注目を集めている。

 家庭でのエネルギー消費のうち、給湯が約3割を占めており、国も普及に向けた手厚い補助金を導入し、普及支援に積極的だ。

 24年度は、経済産業省、国土交通省、環境省の3省が連携し「住宅の省エネリフォーム支援(住宅省エネ2024キャンペーン)」が展開されており、このうち高効率給湯機の導入支援となる給湯省エネ2024事業(経済産業省)には580億円の予算が計上された。

 対象となる高効率給湯機は、エコキュートのほか、電気ヒートポンプ・ガス瞬間式併用型給湯機(ハイブリッド給湯機)、家庭用燃料電池「エネファーム」。

 高効率給湯機の中でもエコキュートは、最も市場規模が大きい。日本冷凍空調工業会がまとめた出荷統計では、22年度には過去最高となる70万台強を記録し、市場は順調に拡大した。23年度は前年比87.6%の61万6000台で推移している。

 普及が拡大するZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)でも高効率給湯機の中で採用されるケースが多く、補助金を追い風にエコキュート導入の加速に期待がかかる。

 エコキュートが登場したのは20年以上前であり、今後、買い替え需要も増えるとみられる。耐用年数は10年のため、10~15年で買い替えるユーザーが多く、着実に新規需要に加えて更新需要の拡大が見込める。

 さらに太陽光発電システムを設置する世帯では卒FITユーザーが増え、電力の自家消費ニーズが強まる中、太陽光発電システムの余剰電力を有効に活用して沸き上げる「おひさまエコキュート」も注目されている。(おわり)