2024.07.25 【半導体/エレクトロニクス商社特集】日本の半導体復活へ政府が支援拡大 23年度補正予算、前年1.5倍の2兆円弱
JASMの工場
経済産業省の半導体・デジタル産業戦略検討会議によると、半導体関係補正予算事業は2023年度に2兆円近くに達し、前年度に比べ1.5倍の規模となった。これに先立つ20~22年度の政府支援により、半導体製造受託(ファウンドリー)大手、台湾積体電路製造(TSMC)子会社JASM(熊本県菊陽町)やメモリーのキオクシアなどの大規模な国内投資案件も動く。
同会議は21年より不定期に開催。国内で半導体を生産する企業の同分野に関連した合計売上高を30年に15兆円超、20年実績の5兆円の3倍超に引き上げる構想を描く。24年5月の第11回会議では23年度の半導体関係補正予算事業を合計1兆9867億円と集計した。前年度比52.4%拡大。内訳は「特定半導体基金」が7652億円で、既存基金残金を含み同70%大きい。「経済安保基金」が5754億円で同56.1%大きく、「ポスト5G基金等」は6461億円で同33.2%大きい。
20~22年度の政府支援により動く半導体関係の大規模国内投資案件をみるとJASM、キオクシア、マイクロンメモリジャパンなどが目を引く。
JASMの86億ドル(1兆3400億円相当)の案件は22年に助成対象の認定を受け、最大助成額は4760億円。主要製品は22/28ナノメートル、12/16ナノメートルプロセスのロジック半導体で、生産能力は12インチ換算で月間5.5万枚。24年12月に初回出荷し、納入先は日本の顧客が中心。
JASMは別途6、12、40ナノメートルのロジック半導体生産のため139億ドル(2兆1600億円相当)規模の設備投資を行うが、うち40ナノメートル向けを除く122億ドル分について24年2月に新たな認定を受けた。最大助成額は7320億円。生産能力は6、12ナノメートル製品が月間4.8万枚、40ナノメートル製品も含めると同6.3万枚。27年10~12月に日本の顧客を中心に初回出荷する。
キオクシアなどの約2788億円の案件は、22年に認定を受け、最大助成額は約929億円。三重県四日市市で第6世代の3次元フラッシュメモリーを製造する。生産能力は月間10.5万枚で23年に初回出荷。メモリーカードやスマートフォン、タブレット、パソコン/サーバー向け記憶装置のSSDに加え、データセンター、医療や自動車分野に向ける。
キオクシアなどは別途第8、第9世代の3次元フラッシュメモリー生産のため四日市市と岩手県北上市で約4500億円の設備投資も行う。24年2月に認定を受け、最大助成額は1500億円。生産能力は月間8.5万枚。25年9月に初回出荷予定。第6世代と同様の需要を見込む。
マイクロンメモリジャパンの1394億円の案件は22年に認定を受け、最大助成額は約465億円。広島県東広島市で1ベータ世代DRAMを製造。生産能力は月間4万枚。初回出荷は24年3~5月。自動車、医療機器、インフラ、データセンター、5G通信、セキュリティーなどの用途を想定する。
マイクロンは別途、東広島市で極端紫外線(EUV)を導入した1ガンマ世代DRAM生産のため5000億円の投資も計画。23年に認定を受け、最大助成額は1670億円。生産能力は月間4万枚で、25年12~26年2月に初回出荷予定。1ベータ世代の用途に加え生成人工知能(AI)に活用できる。
世界半導体市場統計(WSTS)の6月の発表によると、日本の半導体市場は23年実績が前年比3.8%増の約6兆5637億円。24年は同4.6%増の6兆8670億円、25年は同9.3%増約7兆5088億円との予測だ。
電子情報技術産業協会(JEITA)は5月に発表した政策提言の中で、政府の戦略について、巨額投資の早い社会実装が進んでいると評価したが、従来のビジネスモデルのままでは「先端ロジックではTSMCに追いつくことは難しく、メモリーは先細り、パワー半導体も中国の追い上げがある」とも指摘した。
JEITAはビジネスモデルが鍵を握る分野として複数の小さなチップを単一パッケージに収めるチップレットを挙げる。日本は素材や後工程に強いが、設計と後工程の結びつきも重要で多様なビジネスモデルが生まれるという。
二刀流人材の育成
JEITAでは、Rapidus(ラピダス)などが参加する技術研究組合、最先端半導体技術センター(LSTC、東京都千代田区)なども念頭に、日本の研究開発組織にビジネスモデルや社会実装を策定する部署を置く意義を強調し、「技術と経営の二刀流人材の育成が急務」ともした。