2024.07.30 【家電流通総合特集】家電流通 24年後半の戦略 東芝コンシューママーケティング 鈴木新吾社長

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実演など体験型の提案が重要

〝コト〟ベースで訴求

 今年前半(1~6月)の国内家電市場全体は前年をわずかに上回って推移しているが、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、オーブンレンジ、掃除機、炊飯器の主要6製品の販促を強化する当社は、市場よりも良い水準で販売ができた。チャンネル別にみても量販店、地域店の「東芝ストアー」、EC(インターネット販売)とも前年伸長している。特に東芝ストアーは、2022年度、23年度とも伸長し今年も伸びている。

 製品別には、冷蔵庫やオーブンレンジは昨年以降、好調に推移しているほか、各製品でシェアの改善が図れてきているとみている。エアコンは、今年は早い時期から暑い日が続いた上、販売店側で早期提案などをしていることもあり出足は良いが、ここ数年をみていると猛暑だから爆発的に販売が伸びるわけではないため、この先の天候なども含めて注視していきたいと考えている。

 当社は数年来、顧客体験価値の向上に取り組んできている。東芝ライフスタイルではお客さまの声に耳を傾けた製品開発に力を入れてきているが、流通の現場や最終消費者に近いところにいるのが当社になる。お客さまの声を拾い製品開発にフィードバックできるようにするだけでなく、流通各社の力を借りながらお客さまに、製品の良さやメーカー側の声を伝えていくことも役目だ。

 例えば、当社洗濯機のウルトラファインバブル洗浄の良さを伝えるために、ウルトラファインバブルの洗浄効果を確認できる実験装置を全国に100台規模で用意し、実演できるようにした。これからは体験型の提案が重要になってくる。オーブンレンジでも手間をかけず時短でおいしい調理ができることを提案していくことも重要だ。当社は全国に約600人の営業を配置しているが、全員が調理の実演などができるようにしている。合展や個展などのイベントでもすぐに実演の支援ができる。

 実際に体験型の提案に取り組む店舗も増え、成果につなげてきているところもある。ドラム式洗濯乾燥機の洗濯物を乾燥させるメリットを伝える場合でも、カタログだけでは十分に伝えられないだろう。東芝ストアーでドラム洗で乾燥させたタオルと天日干しのタオルを店頭に置いて触ってもらう実演をして販売につなげているところもある。量販店でもリアル店舗でしか体験できない実演などに力を入れている。

 当社の営業自身も常に体験価値を訴求できるようスキルを上げていこうとしている。昨年からは単なる製品の機能を説明するだけでなく市場の動きなども提供できるよう、量販店の営業だけでなく東芝ストアーの営業担当も市場動向を把握し店舗に情報提供できるようにもしている。

 後半戦も前半同様に市場は大きく伸びていく見通しではないが、引き続きお客さまの体験価値を高めていくための取り組みを強化する。合わせて俳優の反町隆史さんを東芝ライフスタイルのアンバサダーに起用して、ブランドステートメントである「タイセツを、カタチに。」を体現した新たなコミュニケーション活動を本格的に進めていく。

ブランド認知へ

 東芝ブランドの「安心」というイメージを担保しながら、次の若い世代にも東芝ブランドを認知してもらえるようにしていきたいと考えている。後半戦に向けては量販店や東芝ストアーにもコミュニケーション活動の趣旨を説明しながら、実際の販促と連携できるようにしていきたい。

 新製品では、8月下旬から自動ごみ収集機能付きのコードレススティック掃除機を発売する。新製品を投入することで、クリーナーでもシェアを伸ばせるようにしていく。販売店と一緒になって販促をしていきたいと考えている。

 秋には体験型の新商品研修会「東芝体感勉強会(MST)」も行う予定だが、来場した販売店に新たな気づきを与えられるようにしていく。昨年からは、製品の機能や性能といった技術面での訴求だけではなく「コト」ベースで説明していくようにしている。お客さまにとってどのようなメリットがあるのか、実際の生活シーンにつながるような提案ができるようにしていきたい。

 メーカー側が押し出している製品の機能を説明するだけではなく、強化した機能で具体的にどのように使い勝手などが変わるのかを実演できるようにしないと、本当の良さが伝わらない。販売店にまず体感してもらうことで、お客さまにも提案ができるようになる。勉強会ではコト提案につながるメニューをさらに拡充していく。例えば調理家電は食欲の秋にちなんで提案することが多いが、暑い夏こそ火を使わない時短調理ができるオーブンレンジを提案してもよいと思っている。

 今後は東芝ライフスタイルの製品開発に生かせるフィードバックをさらに進めていきたい。お客さまの評価や販売店の声なども速やかに事業部門に返していくことで、よりお客さまが求めている製品開発ができるようになるはずだと考えている。